令和3年度

令和3年度入学式学長式辞

 新潟県立大学に入学された国際地域学部209名、人間生活学部92名、国際経済学部93名、大学院国際地域学研究科2名の皆さん、入学おめでとうございます。新入生の皆さんはもとより、皆さんを支えてこられました御家族や関係者の皆様にも心よりお祝いを申し上げます。昨年来、世界に広がる新型コロナウイルス感染に直面し、皆さんはこの入学式を迎えるまでの間、幾多もの苦難があったと察します。そうした困難を乗り越え、今日から新潟県立大学の仲間として共に活動できることを本学の教職員一同、大変嬉しく思っています。

 この1年余りの間、皆さんは新型コロナウイルスの感染から自身を守るために様々な経験をされたことでしょう。これから皆さんは新しい環境の下で、修学に取り組むことになりますが、残念ながら、感染症はまだ収束しているわけではありません。大学としては、皆さんが安全に勉学に取り組むことができるように、感染防止に万全を尽くしますが、皆さん一人一人が感染防止に心がけることが重要です。密閉、密集、密接を避け、マスクを着用し、手洗い・手指消毒を励行すると共に、大学が皆さんにお伝えする感染防止上の情報を良く理解し、感染防止に心がけて下さい。

 世界の多くの大学において、これまで当たり前に考えていた対面での講義、演習、実習がオンラインによって行われることになりました。本学も例外ではありませんでした。皆さんの中にもオンラインによる学習に取り組まれた方はいると思います。本学では、今年度の前期においては、大規模教室での講義はオンラインによることになりますが、感染防止に十分な注意を払いつつ、できる限り多くの授業を対面とし、質の高い教育を実現するよう準備を整えています。教師や友人達との間での対面による学びを大事にしたいと思います。
 その一方でオンラインによる教育は我々に新たな選択肢をもたらしたことも確かです。新型コロナウイルス感染防止への我々の対応は、社会に新たな変革をもたらす機会となっています。新型コロナウイルスの感染を防止するという直接的な効果にとどまらず、対面がもつ空間的距離的制約を乗り越える上で大きな力を発揮しつつあります。海外渡航をせずとも海外の交流協定校の講義を受講し、他国の大勢の学生と交流することが可能となりつつあります。
 オンラインが教育環境を大きく変化させてきたように、情報通信技術の飛躍的発展は、ビジネス、医療、働き方、住まい方から日常生活の隅々に至るまで影響をもたらし、社会を大きく変容する要因になっています。皆さんは今、こうしたデジタル社会への大変革の入り口に立っています。現在の変化は確かにクライシスでありますが機会でもあります。皆さんには、情報化社会におけるイノベーションのうねりに積極的にチャレンジして頂きたいと思います。 

 本学は開学以来、「国際性の涵養」「地域性の重視」「人間性の涵養」を教育理念に掲げてきました。その下に、国際的視野、専門力、コミュニケーション力を身につけ、豊かな人間性をもって社会に貢献しうる人材として成長するよう、それぞれの学部、あるいは大学院において充実した教育カリキュラムを展開いたします。
 国際地域学部では、英語はもちろんのこと、ロシア語、中国語、韓国語の高度な運用能力を皆さんが修得する上で、他に誇る体系的な教育プログラムを用意しています。また、国際関係・比較文化・露中韓に関する専門的な学修を深めます。さらにこの学部からは多数の学生が海外研修や留学にチャレンジしています。 
 人間生活学部では、豊かな人間性と国際的な視野を備えた上で、保育・幼児教育、社会福祉、健康・栄養、食品についての専門知識・スキルを身につけ、プロフェッショナルとして社会で活躍する人材として成長して頂きたいと思います。そのために高い専門性と実践性を磨くための周到な教育プログラムが用意されています。
 国際経済学部に入学される皆さんは第2期生になります。国際経済と地域経済の両分野を担う人材の育成を目指して、経済・産業・企業に関する専門力を修得するための体系的な教育プログラムを備えています。また、データ・情報分析力、英語はもちろん露中韓言語による国際コミュニケーション力を高める教育プログラムを用意します。皆さんには、地域から世界へ活躍できる実践力を備えた人材に成長して頂きたいと思います。
 大学院国際地域学研究科では、国際関係や東アジア地域についての高い専門的研究に従事し、学術の発展に貢献する人材の育成を目指しています。院生の皆さんには、それにふさわしい教育研究環境が用意されています。

 これから皆さんはそれぞれの学部・大学院において知力を磨くことになりますが、皆さんが大学で修得するものは断片的な知識の集積ではありません。これからの長い人生において学び続ける上で必要とされる知の基礎をなす体系図と言えるものでしょう。そして、皆さんが大学で学ぶ最も重要なことは、直面する事実を正しく認識し、真の事実を自らの力で検証する知力を身につけることです。そうした叡智を身につけるならば、皆さんの長い人生は豊かなものとなるでしょう。大学を皆さんにとっての良き鍛錬の場として頂きたいと思います。

 今日からの大学生活は皆さんにとっての新しい出発点です。皆さんには何よりも健康であってほしいと願います。そして、教師や友人達と触れ合い、知性と人間性を養い、共に力を合わせ、人生を豊かに生きるための基礎を作り上げていただくことを期待します。

 ご入学、誠におめでとうございます。

 

 令和3年4月6日

新潟県立大学長 若杉隆平

令和3年度卒業式・修了式学長告辞

 

 本日、新潟県立大学を卒業される学士266名、修士2名の皆さん、卒業、修了おめでとうございます。

 皆さんが晴れて本日のよき日を迎えることができたのは、もちろん皆さん御自身の研鑽によるものですが、この日に至るまでの長い年月にわたり、皆さんの成長を支えてこられたご家族の方々の御支援はなくてはならないものであったと思います。ご家族の皆様にも心よりお祝いを申し上げます。また平素より本学の教育研究にお力添えを下さいます関係者の皆様にこの場をお借りして心よりお礼を申し上げます。

 皆さんは、新型コロナウイルスの感染の拡大によって十分な大学生活を送ることができたとは言えないかも知れません。しかし、皆さんは、この間、通常ではできない経験をしてきたことも確かです。

 新型コロナウイルス感染症は、周りの人たちを感染から守らなければ、自らの感染を防げないこと、他国の感染の収束がなければ自国の感染は収束しないことを目の当たりにし、他との共存の大切さを改めて認識されたと思います。

 この間、人と人との距離を保つことが求められました。皆さんは、改めて人との繋がりや共感の大切さを身に染みて感じられたのではないでしょうか。新型コロナの感染が広がる中で、残念ながら人々の間での分断が顕在化しました。民主主義の基本は「個の自由」であります。このことが尊ばれる国や社会において、マスクの着用やワクチン接種を巡る考え方の違いが、却って人々の間に分断と排除を招き、社会に不幸をもたらすという面が見られました。皆さんには、人との繋がりや共感が薄れ、他者への寛容さが社会から失われる危うさを感じた方が少なくないと思います。個人の自由と尊厳は最大限尊重されねばなりません。それ故、他者の自由と尊厳を大事にする寛容さが一層重要となります。

 皆さんはICTによる社会の変革を日々感じたことと思います。デジタル化社会がもたらす革新は、新型コロナウイルス感染症によって余儀なくされた人と人との距離を埋め合わせる上で大きな役割を果たしています。皆さんは、オンラインでの学習が広く行き渡り、定着するに伴い、移動時間や場所に制約されずに、学び、対話し、コミュニケーションを重ねることができる社会へと大きく移り変わってきたことを実感したことでしょう。皆さんにはこうした社会の変革をリードする役割を担って頂きたいと思います。

 我々は今、地球上の誰もが世界の人々と瞬時につながる社会にいます。この卒業式を前にして、我々は国際社会の平和と安定を根底から覆す分断と排除が武力によってなされている悲惨な現実を目にしています。いかなる理由があるにせよ軍事力による侵攻や排除は決して容認できるものではありません。我々の大学には、ロシアを学び、ウクライナやロシアに家族や友人を持つ教職員、学生は少なくありません。これらの方々が被害や影響を被ることのないことを願い、私は2月27日、本学を代表して、一日も早い平和的解決を強く訴えました。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う社会の変容、民主主義の基礎を脅かしかねない社会の分断、デジタル化社会の大変革、世界を揺るがす平和への挑戦のいずれも我々がこれまで経験しないような激動です。皆さんは今日、本学を離れ、そうした激動する社会へ門出をします。

 皆さんは、本学において多くの友人や教師に恵まれ、幅広い視野と学ぶことの基礎を修得しました。そして、高度な語学力、国際社会や文化を理解する専門性、また、子どもの教育や食と健康を担うプロフェッショナルとしての専門能力を身につけてきました。大学で修得したこれらのものは単なる知識の集積ではありません。皆さんがこれからの長い人生において学び続ける上で必要とされる知の体系図と言えるものでしょう。本学で学び取った知的基盤をもとにして、これから皆さんの前に広がる実践の場でさらなる飛躍を遂げて頂くとともに、人生航路の舵取りをして頂きたいと思います。

 皆さんのこれからの長い人生が健やかで豊かなものとなりますことを、そして、新潟県立大学の卒業生としての誇りを持つ先輩、同僚、後輩との良き出会いが数多く生まれることを願ってやみません。

 本日は、卒業、修了、誠におめでとうございます。

 

                                                 令和4年3月22日

                                             新潟県立大学学長 若杉隆平