コロナ禍に新たな学びへ向かう県立大

 感染が拡大する新型コロナウイルスによって人々の健康、生命が脅かされ、様々な面で深刻な影響を受けていますが、教育研究も例外ではありません。特に教育においては教師・学生間の触れ合いが大切であるため、どのようにして感染から身の安全を確保しながら質の高い教育研究を実現するかは大学に課された難問です。
 県立大学では、昨年度前期には多くの授業をオンラインによる授業に移行しました。県内の感染状況が落ち着きを見せ始めた後期には大教室での講義はオンライン授業、小規模クラスや実習などを対面授業とした教育を進めました。今年度前期には全面的な対面授業への復帰を想定しましたが、4月以降の厳しい感染状況を踏まえて、対面が不可欠な実習科目などを除きオンラインによる教育を進めています。教職員はもちろん、学生諸君には、感染の防止と教育方法が大きく変更する中での新たな授業態様への適応とに協力いただいたことにより、学内に感染クラスターが発生することもなく、前期の後半を迎えております。
 この1年余りの間、大学の教育環境は大きく変わりました。質の高いオンライン教育を実現するために、教職員は新たな教材や教育方法の開発に懸命に取り組み、学生諸君も新たな教育方法に徐々に馴染み、対応してくれています。対面のようには行かない面がある一方で、遠隔地からの教育の実現、海外の学生との交流、画面を通した学習内容の的確な伝達など、オンラインの長所を活かした学びに取り組んでいます。
 昨年夏に本学は、米国教育協議会主催、文科省・在日米国大使館支援による「国際協働オンライン学習プログラム(Collaborative Online International Learning = COIL)」夏季オープントレーニングプログラムにアメリカ・ハワイ大学と共同で実施するプロジェクトを応募し、採択されました。このプログラムには東大、筑波大、上智大、ハーバード大、オハイオ州立大等日米15大学が参加しており、本学もその一部としてプロジェクトを実施しました。アメリカ・ハワイ大学や東アジアの大学と本学教員・学生とのオンラインによる協働学習プロジェクト(COIL)を実施したことによる教育研究上の成果は、本学の教育の幅を広げる上で大きなプラスとなっています。
 また、昨年秋以降、公開講座・リカレント講座をオンラインで実施し、沢山の視聴者を得ることが出来ました。こうした取り組みは本学の教育研究の成果を多くの社会人の皆様にお伝えする上で大きなプラスとなっています。感染が収束した後においても、オンラインによる教育を教育研究上の新たな選択肢としてとらえ、引き続き展開したいと思います。
 もちろんオンラインによる教育だけでは十分とはいえません。対面による教育が重要であることは言うまでもありません。感染を防止しながら対面での教育を実施する上でワクチン接種は有効な拠り所になります。本学では、6月初に政府が決定したワクチンの職域接種の開始に迅速に対応する準備を整え、7月10日より学内においてワクチン接種を希望する全学生・教職員を対象としたワクチン接種を開始することになりました。職域接種の申請には、大学自らが医療従事者等の確保をしなければならないことから、医療系学部を擁しない本学にとって越えなければならないハードルは低くはありませんでしたが、幸いにも多くの関係者の皆様のお力添えを頂くことにより実施に至ることが出来ました。特に、ワクチン接種に従事いただけることになった新潟県内の大学関係者・医療関係者の方々に改めてお礼を申し上げます。
 登校機会が少なく、孤立しがちな学生に対しては、きめ細かな教育指導を行うなど教職員あげて多大な努力を傾注していますが、学生生活を謳歌することがかなわず、初めてのキャンパス生活を楽しみにしていた新入生に多くの我慢を強いていることは確かです。コロナ禍での学生・教職員の取り組みに対して、保護者の方々はもちろんですが、生協をはじめ多くの関係者から支援を頂いていることに感謝したいと思います。とりわけOB・OGの皆さんから寄せられる温かい励ましは、厳しい環境に耐えている後輩達の心に響き、勇気づけることは間違いありません。
 今後、ワクチン接種が行き渡り、よりよい教育研究環境が回復する日が到来するのも遠くはないと期待しています。そうした中で、コロナ禍にありながらも新潟県をはじめ関係者のお力添えにより、本年末を竣工予定として新校舎の建設が順調に進んでおります。
 感染が1日も早く収束し、一層充実した環境の下で教育研究に邁進したいと願っています。

 

令和3年7月
新潟県立大学学長 若杉隆平