令和7年度

令和7年度入学式学長式辞

新潟県立大学に入学された414名の皆さん、入学おめでとうございます。教職員一同を代表いたしまして、新入生の皆さん、そして皆さんを支えてこられました御家族や関係者の皆様に心よりお祝い申し上げます。新たな大学生活へのスタートラインに立っている皆さんをお迎えし、これから新潟県立大学の仲間として共に活動できることを大変嬉しく思っています。

これからの大学生活を皆さんはどのように描いているでしょうか。これまで皆さんには大学入学という決まった目標に向かって日々研鑽を重ねてきましたが、今日からは、皆さん御自身が主体的に学びの目標を立てるという新たな世界に進むことになります。皆さんには、そのための十分な時間が与えられ、そして何よりも、先達となる多くの優れた教授陣、様々なことを話し合える沢山の友人や仲間がいます。そうした人々の集まりの中で、それぞれの学びの道を歩んでいただくことになります。大学は皆さんの学びを全力でサポートします。

皆さんが学ぶ新潟県立大学は、規模こそ大きくはありませんが、それぞれの専門領域で質の高い教育研究を行っています。国際関係、異文化の比較研究、ロシア語・中国語・韓国語の言語学を専門領域としたいと思っている方、経済学を学び、国際経済、地域経済、あるいは大規模データを駆使して社会の課題解決や付加価値を高めるデータサイエンスの専門を極めたいと思っている方、子どもの教育、社会福祉、食と栄養を通じた健康管理の専門家を目指そうと思っている方、様々ですが、皆さんの期待に本学は十二分に応える教育を実践します。今年から国際経済学部にデータサイエンス経済コースが新設されました。皆さんの中からはデータサイエンティストの第一期生が誕生することになります。

大学院では特色ある教育研究を行っています。国際地域学研究科では、国際政治・国際関係、国際経済・国際開発の分野での教育研究に加えて、北東アジア研究所が中心となって中国、朝鮮半島、ロシア、モンゴルの北東アジア地域に関するユニークな教育研究を行っています。北東アジアと深い関係を持つ新潟県に拠点を置く大学の強みが発揮されています。

本学では、地域性の重視、人間性の涵養とともに、国際性の涵養を教育研究の基本理念とします。健康栄養学分野での一例を挙げてみたいと思います。就学する児童生徒が心身共に健やかに勉学に勤しめる条件を整える上で、栄養管理の行き届いた学校給食制度が大きな役割を果たすことは広く知られています。学校給食は社会的インフラと言っても良いかも知れません。しかし途上国や新興国の中にはそうしたインフラがまだ整っていない国があります。本学の村山伸子教授をはじめとする健康栄養学科・大学院健康栄養学研究科の教員は、国際機関や日本の援助機関と協力しながら、健康栄養学の専門家として、各国の学校給食の制度設計をアドヴァイスし、学校給食制度を運営する人材を育成する国際的教育研究を担っています。海外からの研修生が本学で専門的な研修を受け、新潟の学校給食の現場を体験し、専門人材に育つことを支援しています。この一例には、本学が国際性・地域性・人間性を重視する教育研究の特徴があらわれています。

本学にはさまざまな分野で活躍する教員がいます。皆さんには講義や演習を受けるだけでなく、本学の教員が展開する様々な教育研究の世界に積極的に触れてみて下さい。

国際社会のグローバル化に伴い、我々は戦争、飢餓、環境、感染症、社会の分断、経済摩擦など複雑な課題に直面しています。これまでにない深刻な状況を目にしていると言えます。そうしたことに対してどのように備えるべきでしょうか。

かつてオルテガは「大学生活は、社会の一員として責任ある行動を取る上で必要な素養を培う場である」と述べています。皆さんには、専門分野における知力だけでなく、グローバル社会で活躍するための素養を身につけていただきたいと思います。それには、異文化の人々と協働し共生するマインドをもって、語学力・コミュニケーション力を高め、主体性・積極性・協調性をもって社会に係わる力を養うことが求められます。本学では、皆さん一人一人がそうしたことに主体的に取り組む学生であることを認証する「新潟県立大学グローバル・イニシアティブ」認証制度を始めます。グローバル社会で活躍するための皆さんの主体的取り組みを大学は惜しみなく支援します。

皆さんには情報データ分析に積極的に取り組んでほしいと思います。本学は国の「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」認定校として、「UNP DSリテラシー教育プログラム」を展開しています。既に300名以上の学生がプログラムを履修してきました。現代に生きる私たちは、平安時代の人々の一生分の情報量をたった1日で得る時代を過ごしていると言われるほど、日々大量の情報に接しています。そうした情報の中から、虚偽の情報、悪意に満ちた情報を選別し、あるいは、AIを正しく活用し、正しい判断をすることが求められています。それには、情報を取り扱う上でのリテラシーを高めることが不可欠です。データサイエンスを専門としようとする人はもちろんですが、そうでない学生であってもデータサイエンスの基礎は修得してほしいと思います。

新潟県立大学は、本年16周年を迎えました。1963年に創立された県立新潟女子短期大学を前身として2009年に開学した発展途上の若い大学ですが、新潟県をはじめとする多くの関係者の御支援によって、本学の教育内容、教授陣、教育施設は格段に充実しつつあります。少人数教育を特徴とし、教室では、教師と学生、学生同志の間に様々な協働が生まれ、優れた教師や良き仲間たちとともに切磋琢磨しながら過ごす教育環境は、本学の誇りとするものです。皆さんには、こうした本学の教育環境を存分に生かし、様々な学問分野に触れていただき、仲間と楽しく議論し、自らの考えを深めていただきたいと思います。

最後に、皆さんが充実した大学生活を過ごすには、何よりも心身共に健康であってほしいと願います。これからの学生生活が、知力と人間力を高め、皆さんをたくましく成長させるものとなることを心から期待しています。

本日は入学おめでとうございます。

令和7年4月7日

新潟県立大学学長 若杉隆平

 

令和7年度卒業式・修了式学長式辞

本日ここに学士の学位を取得して卒業される373名の皆さん、修士の学位を取得される9名の皆さん、おめでとうございます。新潟県立大学の教職員を代表して心からお祝いを申し上げます。

皆さんが晴れてこの日を迎えられたのは、並々ならぬ努力と研鑽の賜物であることは言うまでもありません。しかし、その陰には、常に皆さんを励まし、支え続けてくださったご家族をはじめとする多くの方々の温かいご支援がありました。この場をお借りして、ご家族、そしてご支援くださった全ての方々に、深く感謝と敬意を表したいと思います。また、本日の式典にご臨席賜りましたご来賓の皆様にも、心より御礼申し上げます。

皆さんの中には、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが漸くピークを通り越した4年前、この会場で入学式を迎えた日のことを思い返している方もいると思います。私も、オンラインによる授業から、一人一人の顔を見、語らいながら講義、演習、実習が行われ、また、海外留学も再開され、本来の大学教育に回帰する日が来たことへの安堵と喜びを感じたことを昨日のことのように想い起こします。

この間、皆さんは、教師の指導を受け、友人達と切磋琢磨しながら、幅広い教養教育、国際的な理解とコミュニケーションの基礎となる語学教育、そして、学部、研究科における専門領域の教育を通じて、沢山のことを学び取ってきたことと思います。国際地域学部の皆さんは高度な語学力、国際社会や文化を理解する専門性を修得し、人間生活学部の皆さんは、子どもの教育、社会福祉、食と栄養を通じた健康管理を担うプロフェッショナルとしての専門能力を身につけ、国際経済学部の皆さんは、経済学を基礎として国際経済、地域経済に取り組む応用力やデータサイエンスと情報分析力を学んできました。また、大学院において高められた高度な専門力は、皆さん1人1人が学術や実務の世界で高みを目指すためのしっかりとした基盤となっているはずです。

皆さんが学業に勤しむ期間は、広く社会に目を向け、幅広い視野を養うとともに、深い人間性を培ってきた期間でもありました。グローバル化を通じて、繋がりが深まり、安定化すると思われた国際社会では、統治者の倫理を振りかざす行動の結果、世界の各地で力によって解決を図ろうとする事態が多発することになりました。また、国際ルールを共有することによって課題を解決する長年の叡智と積み重ねが後退し、国際経済には分断と排除が見られます。こうした社会変化に対して、「国際性」を重んずる本学に学んだ皆さんは、言語、文化、宗教、社会制度において多様であることを互いに認め合い、それぞれの長所を生かし、共感を形成することが、国と国、地域と地域、人と人との相互の信頼を回復する上で重要であることを感じ取ったに違いありません。

また、皆さんはAIの顕著な進歩に見られるIT時代を過ごしてきました。皆さんが生まれた頃の日本の人口は1億2700万人程でしたが、人口はすでにピークを過ぎ、この先の日本社会は、人口が減少し、高齢化します。そうした社会では、AIは、私たちを補う存在として、財の生産や物流、医療、介護、教育をはじめとするサービスの提供の担い手として、大きな力を発揮します。ただし、AIは、目標が与えられればそれに向かって力を発揮しますが、目標を自ら問いただし、その意義を判断し、自らが行ったことに対する責任を全うする主体ではありません。また、他者の痛みを感じ、お互いを尊重し合い、共感し、共生することもありません。AIに依存する度合いの高い社会であればあるほど、深い人間性と高い倫理観がより強く求められることを学び取ったことと思います。皆さんがこれから活躍する社会は、これまで以上に大きく変化します。皆さんのこれまでの学びはこうした変化を乗り切る上での大きな糧となります。

変化のない存在はありません。変化は向上と成熟をもたらします。そして成熟は皆さん一人一人を終わりなく高めることになります。今日まで、変化にチャレンジする備えをしてきた皆さんにとって、変化する社会は皆さん自身をさらに高める場となります。ただし“To climb steep hills requires a slow pace at first.”といわれます。最初は注意深く、そして、賢く考え、ゆっくり歩み始めて下さい。そして大事なことは、転ばないことでなく、転ぶたびに起き上がり、歩み続けることです。これまでの大学生活において学んできたことを時に想い起こし、一人一人の前に広がる豊かな可能性を信じて、静かに、忍耐強く、タフで、しかもしなやかに、遠くまで歩み続けてほしいと願います。

皆さんが健康であり、新潟県立大学の卒業生・修了生としての誇りを持ってこれからの長い人生を豊かに過ごされることを願い、晴れの船出を祝福する言葉といたします。

本日は卒業、修了おめでとうございます。

令和8年3月24日

新潟県立大学 学長 若杉 隆平