県立大学モンゴルオフィスと学術交流

上空から見たウランバートルの夜景は、21年前とは比べようがない明るいものであった。かつて私がモンゴル国立大学からの招聘を受けて若手研究者への1週間余りの集中講義を受け持つためにウランバートルを訪問したのは2004年6月であった。真っ暗な大地に、ほんのりと橙色のライトが点々と見える――それが当時の夜景であった。21年を経て、モンゴルの経済発展とともにウランバートルは様変わりの都市となっていた。

2025年の夏、新潟発のチャーター便でウランバートルを訪問される花角新潟県知事、吉田新潟経済同友会代表幹事をはじめ各界を代表される方々と御一緒に私もウランバートルを訪れることになった。目的は、新潟県立大学モンゴルオフィスの開所式とモンゴル国立大学での学長講演を行うことである。

新潟県、県議会議員の方々、新潟経済界の方々は、かねてからモンゴルとの地域間交流に熱心に取り組んでおり、県立大学においても、モンゴルにおける学校給食プロジェクト(JICAの支援プロジェクト)を実施するための専門家派遣・研究者実務家の受入、学生による新潟とモンゴルとの双方向架け橋プロジェクト、留学生の受入、モンゴル研究者との共同研究の実施などに取り組んできた。こうした学術交流をさらに発展するための拠点として、モンゴル日本人材開発センター(モンゴル国立大学キャンパス内)の一角に新潟県立大学モンゴルオフィスを設置することになった。拠点の設置に当たっては多くの方々からの協力と支援をいただくとともに、学内では学校給食プロジェクトの専門家を代表する村山教授(副学長)をはじめ、モンゴル学界と密接な繋がりを持つEnkhbayar教授(北東アジア研究所長)、国際交流センター長の石井教授や国際交流を担当する事務局の皆さんが大きな役割を担った。2004年にモンゴルを訪問した時から私との交流を続けていただいたDavaadorjさんがモンゴル日本人材開発センター所長として活躍されていることも幸いした。

8月21日11時から、井川原駐モンゴル日本国大使、花角新潟県知事、新潟経済界・各界を代表する方々、モンゴル国立大学学長、JICAモンゴル事務所長らの御臨席の下、モンゴルオフィス開所式が挙行された。参列頂いた方々からのお祝辞の中で新潟県立大学がモンゴルとの学術交流において果たす役割への大きな期待が込められ、新潟県立大学の初めての海外教育研究拠点がモンゴルに開設されたことの意義を改めてかみしめた。

開所式を終えた午後、モンゴル国立大学メインホールで開催された学長講演に臨んだ。モンゴル国立大学アカデミック・ソサエティを代表して招待講演の企画・運営を取り仕切ってくれたのは、21年前の当時、ウランバートルに滞在した私をサポートしてくれた若手研究者であり、今やモンゴル国立大学経済学部教授として縦横に活躍するOtgontugsさんである。講演に先立ちモンゴル国立大学Ochirkhuyag学長から私の紹介とモンゴル国立大学と新潟県立大学とのつながりの紹介をいただき、私からは”Lecture on International Trade: Theory and Policy of Import Tariff”と題して、トランプ関税が国際貿易にもたらす影響について理論・政策の両面から講演を行った。90分にわたる英語での講演が終わるとフロアから多くの手が上がり、トランプ関税に対してモンゴル国が国際社会の一員として担うべき役割や中国経済がもたらすモンゴルへの影響について活発な質問が寄せられた。モデレータ役のOtgontugs教授が閉会のまとめをするまで時間を忘れてフロアとのやりとりを楽しむ一幕であった。

かくして2025年夏のウランバートル訪問は私にとってとても実り多きものとなったが、遡ると、20数年前に世界的投資家ジョージ・ソロスが出身国ハンガリーと同じ移行経済国のモンゴルに提供した教育支援ファンドがあり、それをもとに開講された国際教育プログラムに集結したモンゴルの若手研究者達がいた。新潟に帰るチャーター便の窓から朝日に照るウランバートルと緑の絨毯のモンゴル高原を眺めつつ、モンゴルとの国際交流に大きな力を貸してくださるDavaadorjさんやモンゴルの若い学徒に経済学を教育し、学術交流の輪を広げるOtgontugsさん達との出会いが始まったかつての日々を懐かしく想い返した。

(2025年8月)

(2025年8月21日 モンゴルオフィス開所式)

          

(2025年8月21日 モンゴル国立大学主催・学長講演)