朝鮮経済研究の苦労と楽しみ

研究紹介・研究室紹介 2026年07月01日

三村 光弘 教授

北東アジア研究所
主な研究分野:朝鮮民主主義人民共和国の経済・法、北東アジアの経済協力、世界の多極化とユーラシア

 朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮とする)は、世界の多くの国とは異なり、国連基準の国民経済計算(国内総生産(GNP)などを含む一国の経済の状況を体系的に記録したもの)を公表していません。これは米国や大韓民国(以下、韓国とする)との間で戦われた朝鮮戦争がまだ法的には終わっておらず、韓国とは体制競争が続いていることなどが影響しているからです。したがって朝鮮経済研究は世界の多くの国に対する研究とは異なり、限られた公表データや公式メディアの報道、貿易相手国の通関データなどを組み合わせて朝鮮経済の姿を推計する方法をとらざるを得ません。
 他の国であれば生産と所得の分配状況や、所得をどこから受け取りどこ向けに消費したかなどのデータは統計集(その信憑性は国ごとに異なりますが)から数値を抽出して、マクロ経済学的手法で相互に比較することができます。朝鮮の場合はそれができないので、発表される様々なデータやニュース、朝鮮を訪問した人々からの聞き取り、自らが朝鮮に赴いてのフィールドワーク等を通じて数千ピースのパズルのピースを埋めていくような作業を行いながら、経済の実態に迫るしかありません。自分が想像していた生産現場の管 理システムが、ある日の報道を通じて正しかったことが分かった時には大変うれしく、やりがいを感じます。
 朝鮮経済研究には、国内だけでなく世界各国、特に朝鮮半島に大きな利害関係を持つ韓国や中国、ロシア、モンゴル、ベトナム、台湾、インドなどの国や地域の研究者との研究協力や共同研究も欠かせません。研究活動を通じて、多くの国々の研究者たちとデータがないという共通の課題を乗り越えるべく研究に取り組みつつ、交流を広げていくのも研究の楽しみの一つです。