熱中症 -暑気あたりから夏バテまで-

 毎日暑くて嫌になりますね。僕は暑いのが大の苦手で汗かきなので、油断するとすぐに脱水で「ヘロヘロ状態」になってしまいます。皆さんはいかがでしょうか?

 ところで、皆さんは「暑気(しょき)あたり」「夏バテ」という言葉、ご存知ですか。

 この「暑気あたり」と「夏バテ」は、いずれも暑い時期の体調を表わす日本特有の表現です。しばしば混同して使われてしまう用語ですが、暑い夏の盛りに生じる「暑気あたり」秋が近づいて生じる「夏バテ」では、由来はもちろん、対策も異なります。

 まず「暑気あたり」ですが、「直近の暑さに体が負けてしまった状態」です。「暑気」は「あつけ」というひらがな表記により、すでに平安時代には登場していますが、体に熱気がこもることとして描写されています。そして、体に悪い影響を及ぼすものにさらされることを「中り(あたり)」と言いますよね。「食あたり」とか「湯あたり」などの言葉を聞いたことがあると思いますが、同じ意味合いで「暑気あたり」と呼んでいます。医学的には、短期間に生じた軽い暑熱障害(熱中症;これも「熱」に「中」る、ということですね)で、厳しい暑さにより立ちくらみ頭痛熱感渋り腹などが生じる状態です。したがって、前回も紹介した「暑熱順化」による予防は大切ですが、本格的な暑さを迎えたら、水分摂取適切な塩分摂取冷房の使用による発症防止対策が肝になります。

 一方「夏バテ」は、比較的新しい「俗語」が由来だと言われています。「夏場の無理が祟って秋口に体調が思わしくなくなる状態」です。高温多湿が一定期間続くことにより、疲労、倦怠感や食欲不振などからなる漠然とした体調不良から、動作や思考力などのパフォーマンスが鈍くなった状態です。日本特有の長丁場な「ジメジメとした暑さ」による体調不良の総決算ですが、海外にはこれに相当する概念がなく、適切な訳語もありません。ですから、最近の英文記事でも、時にNatsubateとそのまま書かれているのを目にします。医学的には、軽微な脱水状態による水分負債が続くと同時に、運動、栄養や睡眠の不足が複合的に重なり、身体機能が徐々に低下した状態です。したがって、一般的には真夏のピークを過ぎた「お盆」以後に訴えが多くなります。対策は、日々の積極的な水分摂取はもちろん、「健康の三要素」である「運動、栄養、休養」の維持を心がけることが重要になります。

 日本の夏はもともと高温多湿が特徴ですが、ここに昨今の「地球温暖化」が畳み掛けています。厳しい毎日が続きますが、共に「暑気あたり」と「夏バテ」には気をつけたいものです。

                                        (令和8年7月2日、センター長:田中純太)