揺らぐアジアの地域·海洋秩序とミドルパワーの役割
畠山 京子 教授
国際地域学部 国際地域学科
専門分野: 日本外交、アジアの国際関係、海洋安全保障
担当科目: 日本外交論、国際関係特論、国際関係研究A、卒論、大学院科目(東アジアの国際関係、国際政治の理論と方法)および修士論文指導
ウクライナ戦争、ガザの人道危機、北朝鮮のミサイル発射、中国の現状変更行動、トランプ大統領の再登板など、メディアは国際関係関連のニュースで連日賑わっています。これらの出来事は、世界情勢に大きな影響を与えるだけでなく、日本に直接的かつ重大な危機をもたらすかもしれません。私は、日本外交を切り口に、アジア(最近ではインド太平洋ということが多い)における安全保障分野の動向に焦点をあてて研究を行っています。
アジアと言えば、中国の台頭と中国による南シナ海や東シナ海での現状変更行動、そして米中対立を真っ先に思い浮かべるのではないでしょうか。2010年に日本のGDP を追い越し、世界第二位の経済大国となった中国は「九段線」に囲まれた南シナ海の歴史的権利を主張して現状変更を行うなど、海洋安全保障分野で拡張主義的な動きを見せるようになりました。我々日本人にとって最も象徴的な例が尖閣諸島をめぐる領土紛争でしょう。今まで、日本は米国の同盟国として、米国が支える地域秩序の恩恵を受けて、平和と安定、経済的繁栄を享受してきたわけですが、海洋分野における中国の挑戦は、これまでの日本外交の前提を崩してしまう危険性をはらんでいます。しかも、トランプ大統領の再登板により、米国がどの程度世界やアジアにリーダーとして関与し続けるのかも、不透明になってきています。
こうした米中対立に翻弄される流動的な世界情勢のなか、豪州や日本などのいわゆる「ミドルパワー国」は、法の支配に基づいたリベラルな秩序を支えるために何ができるのでしょうか。私は、ミドルパワー国が、経済力や軍事力、外交を使ってどのように地域·海洋秩序形成に関与しているのか、どのようにASEANを含めた地域諸国をまとめていこうとしているのかなどの問題意識に基づき、これらの国の役割を研究しています。