食中毒

 

最近、少しは涼しい瞬間も出てきましたが、気温の高い状態はまだまだ続きそうです。
ただ、これだけ暑さが続くと、胃腸や感染防御の機能も弱まりがちですよね。
そんななか、注意を要するのが「食中毒」です。
食中毒といえば、冬場のノロウイルス、というイメージがあると思います。
ところが、最近5年間の全国集計で食中毒が最も多かったのが10月、そして、その多くは「寄生虫」と「細菌」なのです。
また、新潟県では、寄生虫ではアニサキスとクドア・セプテンプンクタータ、細菌ではカンピロバクターやサルモネラ、ウェルシュ菌等の報告が目立ちます。

図:厚生労働省ホームページより
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/index.html

いずれの食中毒でも、対策で重要なのは、元になる微生物を食品につけない(清潔(よく洗う))、増やさない(低温(冷やす))、やっつける(加熱(殺菌する))の三原則です。
例えば、購入した要冷蔵品は保冷剤や氷で冷却し、帰宅後すぐ冷蔵庫に入れたいですし、手洗いやゴミ処理はこまめに、まな板や包丁はよく洗うだけでなく、キッチン用漂白剤での消毒も大切です。
また、加熱したものを保存する際には、早めに冷やして粗熱をとり、冷蔵庫で保存することを心がけましょう。

アニサキス:イカ、サバ、イワシ、アジ、タラ等の魚介に寄生する2cmほどの線虫で、生食8時間以内に胃壁へ侵入して激しい腹痛や悪心、嘔吐を来し、治療には内視鏡による虫体除去を要します。食材を60℃で1分加熱、または-20℃で24時間冷凍すると予防可能です。

クドア・セプテンプンクタータ:ヒラメの筋肉に寄生する0.01mm大の粘液胞子虫で、生食4-8時間後に下痢や嘔吐、腹痛を起こします。食材を75℃で5分加熱、または-20℃で4時間冷凍して予防します。

カンピロバクター:ウシやブタなどの腸から食肉、生乳が汚染し、食材の摂取2-7日で下痢や腹痛、発熱を生じます。多くは対症療法のみで治りますが、症状の改善に1週間、完治には2週間ほどかかります。症状が重い場合は抗菌薬を使用します。予防は加熱調理に尽きます。

サルモネラ:ニワトリなどの腸から卵の殻や鶏肉が汚染し、食材の摂取8-48時間で激しい下痢や腹痛、発熱をきたします。通常は対症療法により3-7日で治りますが、重い症状や抵抗力に支障がある場合には抗菌薬治療を考慮します。卵の殻の洗浄や食材の加熱調理で予防します。

ウェルシュ菌:シチュー、カレー等の「煮込み」料理で増殖し、摂取6-18時間で水様便と腹痛に至ります。100℃でも死滅しない一方で増殖したての菌は熱に弱く、また酸素があると増殖できません。酸素に触れて中心部まで加温できるよう、よくかき混ぜながら加熱すると予防ができます。菌が増殖しないよう長時間常温に「寝かせない」注意も必要です。

 その他、有毒な野草や毒きのこを食用種と誤って摂取した自然毒の食中毒もみられます。食欲の秋ではありますが、食中毒に留意しながら季節を愉しんでいただければと思います。

(令和7年9月8日(17日改訂)、センター長:田中純太)