要素であるニューロン(神経細胞)からシステムである脳に迫る

研究紹介・研究室紹介 2025年06月27日

永野 忠聖 准教授

人間生活学部 健康栄養学科
専門分野: 生理学、神経生物学
担当科目: 人体の構造と機能Ⅰ・Ⅱ、食品衛生学、食品衛生学実験、解剖生理学実験、健康管理学実習、英語文献セミナー、卒業研究

 中枢神経系の機能変化や発達について、特に神経細胞に対するサイトカインの作用に着目して研究をおこなっています。サイトカインは細胞間の情報伝達を担う低分子のタンパク群で、作用する空間的距離などが異なっているものの、いわゆるホルモンと呼ばれる分子群と明確な違いはないものです。免疫系細胞の分化・増殖に作用するインターロイキンや、ウイルスや腫瘍細胞に反応して生成されるインターフェロンなどもよく知られるサイトカインです。中枢神経系に対してもサイトカインが作用し、様々な機能変化、もしくは機能障害を生じさせる可能性が示唆され ています。私は実験試料として、培養神経細胞を用いて研究に取り組んでいます。これまでの研究で、モデル動物や培養神経細胞へのサイトカイン投与が神経の発達や機能に影響を及ぼすことが分かっていましたが、 研究の過程で活性酸素生成の阻害により、サイトカインが誘導する神経系の病態や機能変化が低減することが分かってきました。そこで、現在 は主にサイトカイン誘発性の神経機能変化や神経変性に対する抗酸化剤の効果に重点を置き研究を進めています。
 さらに、神経機能・発達の研究対象として着目しているのは、抑制神 経細胞であるGABA作動性神経細胞です(GABAは食品にも含まれるギャバ)。GABA作動性神経細胞は、大脳皮質ではニューロンの2~3割を占め、GABA(γ- アミノ酪酸)を神経伝達物質として放出して神経細胞の興奮にブレーキをかける働きをしています。ちなみに、食べたGABA は脳には届きませんので、食品によるGABA の鎮静作用というのは末梢での血圧低下によるものと考えられています。GABA 作動性神経細胞の機能不全は、学習や精神の機能低下の根底にあるため、特に興味を持ち研究対象にしています。