平成29年度9月

 近年、各大学では夏休み中であってもキャンパスはサマースクールやセミナーなどで賑わいを見せています。本学も毎日ではないにしても、時々そうした雰囲気にありますが、学期中に比べればつかの間の静けさがあります。春学期を走り切った学生達はこのひとときを、ある者は郷里に帰り、ある者は部・サークル活動に取り組み、ある者はロシア、アメリカなどに海外研修に出かけるなど、それぞれ個性溢れる過ごし方をしています。その間、教員は学期中に滞りがちであった研究にこのときばかりと集中的に取り組んでいます。

 この4月に就任した学長も5ヶ月を過ぎると少しは慣れてきましたが、この間、学長が手がけた仕事は新米としては過度に充実したものでした。春学期、大学として最も注意深くなければならないのは、受験生活をくぐり抜けていろいろなストレスをため込んで入学してきた新入生が大学生活にうまく着地し、学業をスタートできる環境を整えることです。一学期を終え、大学生として主体的に学びに取り組んでいる姿を見ると、本学の学生の意欲と適応力の高さに頼もしさすら感じます。2年生、3年生は大学生活に最も専念できる時期に当たります。それぞれの学生が自らのペースをつかんでいることは、キャンパスにいる学生の表情から感じます。学内での修学に加えて、学外実習への準備にも余念がないようです。4年生は就職を決める時期に差し掛かっています。1980年代後半のバブル期を思わせる求人の高さを追い風に受けているという幸運はありますが、学生達の表情は明るいようです。ちなみに、この3月に本学を卒業した学生の就職率は99パーセントという高水準であったことが某雑誌にも取り上げられました。学業を終えた学生を実践の場に送り出す側にとって、この数字は学生達のたくましさを示すものとして勇気づけられるものです。

 国際地域学部、人間生活学部、大学院国際地域学研究科ともに、きめ細かなカリキュラムに基づき学生達の履修をサポートしています。これは本学の教育が社会から評価される基礎となっているものです。春学期ではこうしたレギュラーな講義は順調に進められました。それに加えて、学生達には新たな修学の場を提供しました。各界で活躍される識者を学内に招いて、県民にもオープンな形で開催する公開講義シリーズがその一つです。6月には、本学客員教授に就任いただいている米山隆一・新潟県知事、日下一正・国際経済交流財団会長(元経済産業審議官)、田中通泰・亀田製菓会長、向田吉広・東北経済連合会副会長、亀田制作・日本銀行前新潟支店長、山田正人・経済産業省地域産業基盤整備課長などの方々をお迎えし、「グローバル経済と新潟の産業」に関する講演・パネリディスカッションを開催しました。7月には飯田圭哉・外務省経済局審議官をお迎えし「日本の経済外交」に関する講演をお願いしました。たくさんの学生と県民が本学の一番大きな講義室に集う中で、第一線で活躍する講演者の方々に対して学生自らが質問をぶつける光景を目にしますと、頼もしく感ずるとともに、アクティブラーニングとしての意義も小さくないことを確信します。本学の学生は、新潟市内にありながらも静かなキャンパスと恵まれた環境の中で落ち着いて勉学に専念出来る条件にあります。加えて、首都圏の大学に比べても遜色ないように、社会の第一線で活躍する方々に学生達が直接触れる場を積極的に提供することが必要であると考えています。やがて学生達を実践の場に送り出すことを念頭に置きながら、社会の第一線で活躍する方々や研究をリードする方々に学生が直接対話できるような場をこれからも続けて設けたいと考えています。

 県立大学は社会から育てられるとともに、様々な社会貢献をすることが期待されています。実際に様々なチャネルを通じて国際社会や地域社会とつながっています。先日、中国の孫大剛・総領事ほか総領事館の方々が本学を訪問されたことを機会に日中の経済関係、教育交流について様々な意見交換をしました。地道な活動ですが東区の中学生を対象に学期中、夏休み中の学習を教員及び学生が支援し続けています。私自身のことになりますが、新潟県が今年中に策定する新総合計画を検討する委員会の座長をお引き受けし、県の政策について多くを知り、考える機会を得ました。特に、本格化する少子高齢化と人口減に備えるために、取り組まなければならない政策課題がどのようなものであるかを深く考える機会となっています。そうした中で大学のあるべき貢献の姿も考えたいと思っています。

 先日Times Higher Education(THE)の世界大学ランキングが公表されました。本学がその土俵にエントリーするのはまだ少し先になりそうですが、優れた高等教育機関として多くの学生に選ばれ続けるために不断の改革が必要である点では、世界レベルの大学と変わるものではありません。県民に選ばれ、優れた教育機関として存続するには、将来に向けてどのような教育内容の提供と人材の育成が求められているかを常に念頭に置きながら、どのような大学改革を行うべきかについて検討を深めているところです。

 また、平成33年度入試から導入が予定されている新たな入学試験に関する大学としての取り組みも大きな課題です。すでに本学では、アドミッションポリシー・カリキュラムポリシー・ディプロマポリシーを公表していますが、学びの3要素といわれる「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性・多様性・協働性」をどのようにとらえ、入学時にどのように評価するかという課題に改めて本格的に取り組むことが必要になっています。学内での検討はもちろんですが、高等学校との意思疎通も欠かせないと考えています。

 秋学期も近くなり、学生達がキャンパスに戻り、キャンパス内が本格稼働する時期は間もなくです。

2017年9月
新潟県立大学学長 若杉隆平

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