ごあいさつ(学長から皆様へ)

21世紀に入り私たちを取り巻く社会や自然環境は予想もしないほど変化しています。グローバル化の進展と反グローバリズム・地域主義の台頭、国家間の紛争の多発、拡大する移民問題など国際情勢は極めて深刻です。ICTやAIに見られる急速な技術革新とサイバー空間の拡大、それに取り残されそうな社会、所得格差の拡大、高齢化・少子化、都市化と過疎化、地球規模での自然環境の悪化など複雑な現実に直面しています。こうした現実に向き合うには確かな知力・実践力・豊かな人間性が欠かせませんが、それらを養ううえで大学に大きな役割が期待されています。


新潟県立大学は、主役である学生たちを迎えるうえで「国際性の涵養」「地域性の重視」「人間性の涵養」を教育研究の基本理念とします。地球上の異なる国・地域の文化・社会・政治・経済を理解し、グローバル化する社会を一人ひとりが生き抜くための叡智を養うこと、自らが位置する地域の自然・文化・社会・人間生活を深く理解し、地域を支える力を養うこと、そして、一人ひとりの個性を伸ばし、お互いを尊重し合い、共に社会を支え合う豊かな人間性を伸ばすことは、変化し続ける時代を共に生き抜くうえで欠かせません。


学生たちは修学し、実践の場に出て行きます。それに備えて豊かな教養と実践力のある専門性を身につける教育を提供しなければなりません。変化する時代を乗り切る上で必要とされる人文社会科学分野の専門知識、グローバル社会を生き抜く高い語学力・コミュニケーション能力、保育や健康等の人間生活の基盤を支える専門能力などを修得するために、周到に準備した教育カリキュラムを用意します。そして新潟の平野、海、山に広がる恵まれた自然と社会に接しながら豊かな人間に成長することを支える学びの場を提供します。


新潟県立大学は開学以来、新潟県民の支援を受けて教育研究を行ってきました。今後はさらに、傑出する教育研究分野を誇り、東アジアにおける新潟の存在感を高め、貢献し、リードする知の拠点を目指します。国際地域学部、人間生活学部、大学院国際地域学研究科、外国語教育センター等の教育研究組織、学生支援組織、事務組織が一体となって、教育と学術研究の推進、地域社会への貢献に全力で取り組みます。

新潟県立大学学長 若杉 隆平

新潟県立大学学長 若杉 隆平

平成29年度入学式式辞

新潟県立大学に入学された271名の皆さん、入学おめでとうございます。教職員一同を代表いたしまして、新入生の皆さん、そして皆さんを支えてこられました御家族や関係者の皆様に心よりお祝い申し上げます。 高井・新潟県副知事、横尾・新潟県議会総務文教委員長をはじめ御来賓の皆様には、御多忙の中にもかかわらずご列席を賜り、厚くお礼申し上げます。


本日入学された皆さんは決して容易ではない入学試験を経て入学されました。これからの大学生活への期待をもって新たなスタートラインに立っていることと思います。そうした皆さんをお迎えし、これから新潟県立大学の仲間として共に活動できることを大変嬉しく思っています。


新潟県立大学は、新潟県を設立母体とし、県民の方々からの支援を得て教育研究を続ける知の拠点です。本学の特徴は2つの専門領域を柱とする複合的大学であることです。一つは人文社会科学系、特に東アジアや国際関係を重点領域とする国際地域学部・大学院国際地域学研究科を柱とします。もう一つは人間系です。幼年期の教育や食と栄養という人間生活の基盤となる分野を重点領域とする人間生活学部を柱とします。


新潟は、日米修好通商条約による開港五港の一つであったように、古くから日本海沿岸における重要な国際化の拠点でありました。グローバル化する今日にあって、国際関係、特に東アジア地域との関係を抜きにして政治、経済、文化を語ることはできません。その中で新潟は日本海を挟んでロシア、中国、韓国と直接向き合う地域です。こうした新潟の地理的条件は教育研究に大きな影響を与えます。本学では東アジアと国際関係に関して多くの蓄積を有しています。皆さんの中にはこうした分野に関心と期待を持って入学された学生が少なくないと思います。本学のスタッフと学術の蓄積は皆さんの期待に間違いなく応えてくれるはずです。


新潟県立大学は国際性を重視した教育を行ってきています。豊かな国際性とは、それぞれの国や地域の違いを良く理解し、その上に立って、それぞれの社会がお互いを尊重し、協力し合うことに他なりません。そのためには、異なる歴史、文化、社会、言語を理解する語学力・コミュニケーション力の基礎が不可欠です。本学では外国語教育に特別の取組をしています。英語はもちろんのこと、ロシア語、中国語、韓国語を皆さんが修得する上において、他に誇る教育プログラムが用意されています。基礎力を身につけたら、さらなる語学力を鍛えるために、実際に海外において学ぶ機会にも挑戦して下さい。


本学の前身は1963年に創立された県立新潟女子短期大学であります。幼年期における教育、食と栄養という、いわば人間生活の原点を形成する分野での教育に既に50年以上の歴史を重ねております。本学で修学した数多くの先輩達は実践の場に出て、各界において活躍し、社会を支えています。この分野では特に実践性が重要とされますが、本学ではそれにふさわしい周到な教育プログラムを用意しています。同時に、少子化高齢化が急速に進む今日、育と食において我々はさまざまな新しい課題に直面しています。皆さんには、実践的なスキルを修得すると共に、そうした課題にどのように向き合うべきかを自らの力で考える学生であってほしいと思います。


これからの大学生活を通じて、皆さんがそれぞれの分野において自らを誇ることのできるプロフェッショナルとして、社会に貢献する人材に成長されることを期待しています。しかし単に専門分野における知識を受け身で修得することではそうした人材になれるわけではありません。自らが問題意識を持って主体的に取り組むことが必要です。そのためには幅広い教養を基礎としなければなりません。そして、物事の原点に立ち返って粘り強く考える思考力、新たなものを生み出してゆく創造力が必要です。受験勉強から解放された皆さんには、本学においてさまざまな領域の知の蓄積に触れる機会があります。一つ一つの機会を捉え、自ら考える力をつけることに是非とも心がけて下さい。


大学生活は健康で豊かな人間性を育む機会でもあります。皆さんは、キャンパスの中で人文社会科学を学ぶ友人、人間生活にかかわる専門分野を学ぶ友人など、多様な友人とふれ合うことになるでしょう。そうした友人たちと、学業だけでなく、サークル活動などさまざまな活動を通じて交流して下さい。そして、お互いを尊重し、協力し、社会を支えてゆく豊かな人間性を持って、世界に羽ばたく人材に育ってほしいと思います。


皆さんが新潟県立大学の場において知力と人間力を蓄え、たくましく成長されることを楽しみにしております。ご入学、誠におめでとうございます。


平成29年4月7日
新潟県立大学学長 若杉 隆平

新潟県立大学学長 若杉 隆平

平成29年度卒業式・修了式告辞

本日、新潟県立大学を卒業される学士243名、修士1名の皆さん、誠におめでとうございます。ご臨席を賜りました米山新潟県知事、皆川新潟県議会総務文教委員長をはじめご来賓の皆様、列席の副理事長・理事、経営評議会委員、副学長、学部長をはじめとする教職員一同とともに皆さんのご卒業に心からお祝いを申し上げます。


皆さんが卒業の日を晴れて迎えることができたのは、何より皆さん御自身の研鑽によるものですが、この日に至るまでの長い年月にわたり、皆さんの成長を支えてこられたご家族の方々の御支援はなくてはならないものであったと思います。ご家族の方々にも心よりお祝いを申し上げます。また、学生への支援をはじめ本学の教育研究にお力添えを下さいます関係者の皆様に心よりお礼を申し上げます。


今、皆さんは入学以来この日を迎えるまでの間の学生生活がどうであったかを振り返っていることと思います。期待した学生生活を送ることが出来たでしょうか。知的な探究の場において、これからの長い人生を生きる力を養うことができたでしょうか。そして、今皆さんはどのような思いで新しい門出をスタートしようとしているでしょうか。


新潟県立大学の学生として皆さんが本学で多くのことを学んできた間に社会は大きく変化してきました。その一つの例として人工知能(AI)の発達を取り上げることが出来ます。チェスの世界ではAIが世界チャンピオンを負かしたのは20年前ですが、2年前には、世界優勝を果たしてきた囲碁棋士を相手にAIが勝つことになり、困難と思われていた囲碁の世界でもAIが人間を超えたと言われています。世界の自動車メーカーが競ってAIによる自動運転技術を開発し、すでに一定速度以下での走行や交通渋滞に入ったときにはAIが人間に替わって運転操作をする技術が確立されつつあります。医療診断や新薬の開発にAIが大きな威力を発揮しています。様々な分野でコンピュータの知力が人間の能力を超えつつあります。AIと共存する新しい時代に皆さんが生きて行くことになるのは間違いありません。


ノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のヘックマン教授は、ヒトには知識の蓄積や学力といったIQで測れる能力の他に、意慾、自制心、協調性、社会的適性といった能力があり、この能力が社会活動において大事なことを指摘しました。AIが果たしてそうした能力を発揮することができるかは、まだ分かっておりません。AIの処理能力が高くなることにより様々な便益がもたらされることは確かですが、それだけで真に豊かな社会が実現するでしょうか。それにも勝る人間力の高さが求められるように感じます。これからの皆さんには、AIと共存する新しい時代が幸福なものとなるように高い人間力を発揮して頂きたいと思います。


皆さんはバベルの塔の話を御存知だろうと思います。それによればかつて人々は同一の言葉を話していたとされています。その人々が一緒に始めたのが一つの町を作り、天にも達する一つの塔を作ることでした。それを見た神は、人々が企てることに不可能なことがなくなると感じ、人々の言葉をばらばらにし、互いの言葉が通じなくなるようにしました。その結果、人々は一つの町を作ることを諦めたとされています。もしも言語がばらばらでないことを想像すると社会はどうでしょうか。言語が多様であることで社会の多様性が保たれ、人類の進化が実現しているように思います。


日本は長期にわたって東京への一極集中と地域の人口減少を続けています。こうした一極集中は繁栄の証と思われることもあります。しかし、この20年間を見ると日本は世界の成長に大きく後れを取っています。その一因に東京一極集中があったのではないかと疑問を呈することはできないでしょうか。一極集中によって多様性が失われることが、社会の伸び伸びとした発展と進化を妨げはしないでしょうか。多様性があってこそ社会は変化に適応でき、進化します。皆さんは新潟の地で学生生活を送り、豊かな自然と人間味溢れる環境で自由を謳歌し、学業に励んできました。一極集中とは異なる環境の下で学生時代を送られた皆さん一人一人の多様性に社会は大きな期待を持っています。ネットワーク社会は、どこに居ても世界中の多様な人々を容易に結びつける道具立てを提供してくれています。多様な世界の人々とネットワークで結ばれる皆さん一人一人には、協同して、多様性を尊重する社会の実現にチャレンジしてほしいと思います。そして皆さんが学生時代を過ごした新潟を発展し、進化させる原動力となることを期待したいと思います。


皆さんが船出する社会は、科学技術や社会構造が大きく変化し、これまでとは異なる秩序や調和が形成される時代を迎えつつあります。これから皆さんはそれぞれの立場からこうした変化に直面して行くことになります。「智者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は懼れず」という言葉があります。論語に複数回見られますので、孔子が好んだ言葉かも知れません。「知恵を身につける人は判断に迷うことはない、正しい道を歩む人は心配がない、正しいことに力を発揮する人は懼れることはない」との意味です。自由で他を思いやる気風のある新潟県立大学のキャンパスでの学業生活を通じて自らを磨きあげてきた皆さんの船出にふさわしい言葉ではないかと思います。変化に適応する力を鍛えてきた御自身に自負を持ち、勇気を持って課題に向かってほしいと思います。


皆さんのこれからの振る舞いや行動は、後輩達へのお手本となりメッセージとなるでしょう。一人一人の歩みは時が経つにつれて、時として友の歩みと交差することもあるでしょう。皆さんが将来、新潟県立大学の卒業生として誇りを持って先輩、同僚、後輩との出会いが出来ることを願っております。


本日は誠におめでとうございます。


平成30年3月22日
新潟県立大学学長 若杉 隆平

新潟県立大学学長 若杉 隆平

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