ブックタイトル平成29年度公開講座記録集

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平成29年度公開講座記録集

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平成29年度公開講座記録集

平成29年度 新潟県立大学 公開講座 地域を守る。家族を守る。?いざという時のために?そして、そこから未来にむけた3 つの提言がうまれました。講演の後半にさしかかると、話題は中山間地域型復興住宅の開発手法に移りました。復興管理監の渡辺氏は、被害の大きかった山古志地区の住宅再建にあたり、自力再建を基本路線としつつも、有識者による開発委員会を設け、ナショナルクラスの専門家集団と地元設計事務所や大工工務店とを協働させることで、以下のような地域にあった快適でローコストな住宅開発と地域循環型の供給体制(山古志の家づくり施工者の会の結成、再建者の組織、CM* 1 の実践)の実行を目論みました。1 .「生業の継承」住宅だけでなく八百屋、食堂、床屋など従前の生業が継承できる店舗をはじめコミュニティ施設、福祉医療施設が一体となった仮設市街地としての供給方策の検討2 .「既存施設の利用」破壊を免れた廃校や空き倉庫、寺院、空き家等既存施設を改修して提供3 .「自立的な再生が可能な体制」被災者が建設等に従事できる仕組みづくり* 1 :建設プロジェクトにおいて、建設発注者から準委任を受けたコンストラクション・マネジャーにより、中立的に全体を調整して、所期の目的に向かって円滑に事を運ぶ為の行為のこと1 .「山古志らしい住まい」:地域の伝統的な技術やデザイン、近隣付き合いへの配慮、美しい風景になじむ外観2 .「雪と上手に付き合う住まい」:きつい雪下ろしからの解放、冬でも暖かく明るい住まい3 .「地域循環型の住まい」:県産材・自然素材の活用、地元大工技術の活用と継承4 .「住まい手のコスト負担軽減」:補助制度活用、資材の共同購入、共同建設等5 .「安全、快適、長寿の住まい」:耐震性、断熱性、気密性等の向上しかし、中山間地域型復興住宅にむけた合意形成は、当初の予定より長期化され約一年半という時間を要しました。計画づくりの段階から集落住民の参加を促し、話し合いのプロセスを尊重しつつ、住民自ら意志決定をおこなう方法が、合意形成を遅滞させる要因になっていたからでした。そのやり方を貫いた理由を渡辺氏は、『専門家や行政が決めるのではなく、住民自らが決めることで、村に帰ったとき直面する様々な課題を乗り越えていけると判断した』と説明し、同氏の推測した通り、村が無くなるかもしれない危機感が住民の一体感を育み、課題を乗り越える原動力となり、ふるさとへの誇りや愛着をより強めたことを感慨深く語られました。こうした話を受けて私たち聴衆は、予測不可能な大災害を未来への教訓と位置付け、歴史や先人の自然にまつわる英知を尊重するとともに、21世紀におけるまちづくりの担い手になる思いを新たにされました。渡辺氏の講話の様子University of NIIGATA PREFECTURE 4