ブックタイトル平成29年度公開講座記録集

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平成29年度公開講座記録集

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平成29年度公開講座記録集

平成29年度 新潟県立大学 公開講座 地域を守る。家族を守る。?いざという時のために?●パネルディスカッション第2 部では、渡辺斉氏と本学の関谷浩史准教授がパネリストとなり、災害復興の経験を私たちの身近な問題につなげるための議論が行われた。以下は、その議論の要旨である。(1)災害に対する備え関谷:新潟でも、消防車も入れないような木造住宅密集地において、空き家問題や単身者問題と連動して災害のリスクが高まっている。何かが起こったときに甚大な被害がでる可能性があるが、このようなリスクとどう向き合っていけばよいか。渡辺:都市部では、隣近所の関係性が密でない。顔の見える関係を住民同士で作っておくことが大事。あるいは、街歩きをして皆でリスクを検証しておくことも大事。阪神淡路大震災のとき、いち早く復興したのはコミュニティがしっかりした地域だった。(2)災害が起こった時にどうするか関谷:中山間部には、地域の互助システム、助け合いができるコミュニティがあるが、そのようなコミュニティができていない都市部で災害が起こってしまった場合どうすればよいか。渡辺:難しい問題。災害時の対応マニュアルを作っても、うまくいかないことが多い。実際は人の力が大きい。有能なリーダーが適切な判断を行ってうまくいったという例が多い。できることとして、日ごろから、地域で会合をもつ、話し合いをする、お祭りをするといった活動が重要になる。関谷:災害が起こった時に、昔の知恵が生かされた場所で被害が少なかったという話が興味深かった。渡辺:地域の歴史を知っておくことは重要。新潟では砂丘列上に古い集落がある。砂丘列上は、地盤がいい。逆に言うと、砂丘列の間のくぼ地は、昭和の時代に開発された場所なので不安定かもしれない。地域の歴史を知るには、地名もヒントになり、しばしば地域の特性を示している。また昔の地域の行事にも知恵がある。神社は比較的高い場所にあるが、昔はそこでお祭りや盆踊りをした。それらの行事に参加することが、そのまま避難訓練になった。関谷:都市のリスクが高まっている。どうしてこうなってしまったのか。渡辺:便利、効率、経済合理性を追求しすぎた結果ではないか。人間は自然よりも強い存在なのだという驕りもある。コンクリートで巨大防波堤をつくるよりも、人間は自然に生かされているという視点でもっと自然に謙虚になり、ある程度のリスクは覚悟しながら、避難路を確保するなど、命を守る仕組みを作ることが大事ではないか。また、復興計画は皆が学び合い納得してやっていく仕組みが大事で、密室ではなく住民参加のオープンな形で議論するべき。関谷:中越大地震のときの「山の暮らし再生機構」がドイツの事例をモデルにした理由は?渡辺:都市計画というのは、実際は計画通りには進まない。あらかじめゴールを決めて進んでいくのではなくて、哲学、理念をつくって、それに賛同する人たちが集まって来てそれを支える仕組みをつくるのが大事だと考えた。計画づくりには、外部の知見を活かすことも有効。しかし、地域には地域の特性があり、幸せのかたちがある。特定のモデルにしばられるべきではない。第1回公開講座災害復興と地域づくり?大震災からの経験と教訓?第2部 パネルディスカッション・質疑応答関谷准教授(左)と渡辺氏のパネルディスカッションの様子University of NIIGATA PREFECTURE 12