ブックタイトル平成28年度公開講座記録集

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平成28年度公開講座記録集

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平成28年度公開講座記録集

第1回 映画『風の波紋』に鼓動する新しい「結」の魅力を語り合う田んぼを借りて、住みたいという人は歓迎されると思います。今年の春から木暮さんが管理していた隣の茅葺の家に若夫婦が移住しました。(その後、子どもが生まれましたが、木暮さんの地区では20年ぶりの赤ちゃん誕生ということで、元旦の朝日新聞新潟版に大きな記事になりました)●地域から離れた人たちの故郷を想う気持ち小林:『風の波紋』に出てくる木暮さんも、外から入って土地を借りているわけですね。本人は、「自分の土地が1 つもない」と言っていますが、そのように土地を借りられます。そして、秋になったら土地代を払いに行くわけです。払いに行く相手は、その土地から離れていった人たちですね。「かつて自分たちが暮らしていた場所が、草ぼうぼうではなくて、いまだに綺麗で、米が生産されている。それだけでうれしい。だから地代はカンパします」と言う人もいます。もちろん受け取ってもささいなものです。そこを離れた人たちは、土地が自分の代で放置されないということを、非常にうれしく思っています。今でもあの場所で、木暮さんが春は田植えをし、草取りをし、秋は稲刈りをしているんだなということを、たぶん村の人たちはいつも感じているだろうと思いますね。そういう方が、映画の最後に登場します。そういうことを僕は言いたかったわけです。福本:それでは、最後に佐藤容子さん、お願いします。佐藤:私は、映画を見て、皆さんが、雪で大変だったり、暮らしを1 つ1 つ自分の手で作っていかなくてはいけなくて、すごく大変なはずなのに、みんな生き生きして穏やかに過ごしていることがすごく印象的でした。それと同時に、自分は、そういうふうに1 つ1 つ手作りでやっていく、自然と一緒に生きていくやり方を、全然なんにも知らないと気づかされました。私たち世代から見ると、魅力的な生活である反面、全然価値観が違うし、そういう生活の仕方を知らない。そういう点に関して、小林さんはどういうふうに考えていらっしゃるのか、ちょっとお聞きしたいです。●天野季子さんの感じた「魅力」と十日町での暮らし小林:例えば、天野季子さんという『風の波紋』の主題歌を作ってくださった歌うたいて手の方の例をあげたいと思います。彼女は今31歳ぐらいです。子どもさんが小学校1 年生になりました。撮影したときは2 歳半ぐらいでしたので、もうだいぶ大きくなっていますね。彼女は、埼玉県入間市の団地で生まれ育ちました。そして日本大学の造形学科に進学して、自分の担当教官が「大地の芸術祭」にかかわっていたことが縁で、その手伝いにこの十日町に来ることになる。そうしたときに、自分が育ってきた場所にはなかった村の人たちの心のありように、すごく惹かれたわけです。昔の学校の校舎が今は美術館(「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」)になっていますが、そこに勤めています。結婚したときは、そこで村中の人が集まって結婚式を挙げてくれたそうです。今は家を1 軒借りて、家族3 人で暮らしています。美術館でヤギを飼い始めたりしていますが、畑はしていません。でも、野菜は切らしたことがないといいます。周りの方々からいただけるわけです。周りの人たちは皆、畑をしています。そうすると、間引けば菜っ葉がとれる。皆さん、それを親戚や近所に配るわけです。畑をやってない天野さんのところには、いの一番に持って行きやすいわけですし、ましてや持って行けば、かわいい孫のような子どもがいる。そんなふうに、皆、助け合って生活しています。しかし、冬は雪下ろしが大変なんですね。例えば、1950年代、60年代ごろは、ほとんどの男は出稼ぎに出た時代でしたから、あの雪深いところで家を守っていたのは女性たちなんです。そのような風習7 University of NIIGATA PREFECTURE