ブックタイトル平成28年度公開講座記録集

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平成28年度公開講座記録集

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平成28年度公開講座記録集

第1回 映画『風の波紋』に鼓動する新しい「結」の魅力を語り合う分が村を出るときも、友達、そして先祖さまを拝んで出てきたし、家をつぶすときもご先祖さまに申し訳ないと思って拝んだ」と。「この映画は本当に自分の家がつぶれるところが映っているので、手を合わせながら見ました」と。「映画のなかに、ここは決して人を一人にしない、周りの人がいつも仲間にしてくれているという言葉が出てくるけど、そこのシーンには泣けました」と。そして「相手を思いやるということは、豪雪地帯で生きてきたわれわれのDNAなんです」という言い方をされていました。そうして、その長男の方は、「私は村にいたかった」とおっしゃいました。そういうことから言うと、みんながみんな、この村を捨てて、都会に出て都会の労働者になることを夢見たわけではありません。本当に山が好きで、この村に残りたかったという人もいます。5 年ほど都会に出たけれども、やっぱりあの雑踏の中では私は生きられないということで村に戻ってきた人もいるし、あるいは、父親や母親が病気になったことを機に戻ってきて村を支えた人たちもいて、そういう方々が今60歳から65歳ぐらいになっています。●食べることと生きること小林:それから食べ物ついては、非常に豊かだと思います。都会の人たちが、うらやましがるほどです。地元の方々は、栄養関係の方がびっくりするぐらいに新鮮な野菜を、いろんなお漬物や、その他さまざまな食べ方で食べます。映画の中では、天野季子さんの長女が、「好きなものはなんですか?」という質問に「ご飯」と答える場面がありますね。あそこは笑いましたけれども、そんなふうに、山、それから川、そういうものの中で、自然の中から直接取って食べるという非常に豊かな食の世界があります。ヤギ、家畜も食べます。つまり、ここでは、生きていることと、山菜を食べる、ヤギを食べる、ウサギを食べるということが直結しているのです。これは、僕たちが今慣れてしまっている世界、スーパーに並んでいるものが肉だというのとは違う世界です。肉を食べるということは、命をいただくことなんだということが長く続いてきた場所だと思います。●働くことと稼ぐごと小林:それから「働く」ということで言うと、彼らはもう毎日、毎日、働いています。ただ青島さんのおっしゃる「稼ぐ」ことと、それから「働く」ことを、分けて考えてもいいのではないかと思います。彼らは忙しく働いているのですね。まずは、春先から1 年分の薪を作ります。風呂も薪で焚きます。それから水は山から引いてきた水を直接飲めます。ですから、そういう燃料や水は、ほとんどお金がかかりません。もちろん作っているのは米ですし、それから野菜も作っています。だから、野菜のやりとり、それから漬物のやりとりは、頻繁にあります。他方、「稼ぐ」ことについて言えば、十日町に務めている人も多いですし、やっぱり地元で一番雇用があるのは土建業でしょうか。災害がよく起こりますので、そういう土建業の仕事、そして、冬になれば除雪ですね。木暮さんの場合は、自分の家を直すために、茅葺きの職人に弟子入りした経験もあります。そうすると、伝統的な保存農家の茅葺きなどを引き受けるわけですね。そしてそのときには自分の仲間を引き入れます。必ずそうします。仕事は1 人じゃできませんから。もう引退したような80歳を過ぎた職人さんも日当で働きます。木暮さんは、まだまだ茅葺きを勉強したいと、そういうひと人たちも誘うのですね。そういうことで、お金を使うことはそんなにありません。都会であれば、水も、電気も、全てをお金で買わなければいけません。しかし、地元では電気もそんなには使いません。映画のなかで、権兵衛さんという人がカラオケを歌いますけれども、家の中でオーバーを着ているんです。要するに、家の中でも服をしっかり着ているんですね。暖房設備は、コタツがあって、せいぜいストーブがあるぐらいです。ですから、そんなふうに生活があるんだと思い5 University of NIIGATA PREFECTURE