ブックタイトル平成28年度公開講座記録集

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平成28年度公開講座記録集

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平成28年度公開講座記録集

第2回 里親と子どもがつくる家族のかたちか感想文というものを出されても書けないんです。自分が何を思ってるかも分からない。出されても書けない。それがなぜ書けないかも先生に言えずに、ずっと机の前で真っ白な作文の用紙を目の前にしてずっと固まった後、ひたすら泣いて終わるっていうようなことになるような状態の子でした。彼を連れて、あるとき服を買いに行きました。服も持ってなかったので、服を買う。彼の好きなものを選びなって言っても、選び方が分からないんですよ。ですから店の前で固まったまま、入れないんです。かといって、後ろに下がって、やっぱ買えなかったって言って戻ってくることもできないんで、店の前でずっと立ったまま泣いてたっていうようなこともありました。ちなみに、彼の部屋は、私のうちに来てからも常にごみが散乱しておりました。我々が片付けても、しばらくすると、元のごみの部屋に戻るというような状態でした。あるとき、私たちも片付けてて、ふと、もしかしてどうであれ彼が育った環境がごみの中でしたので、このほうが落ち着くのかなということを思いまして、片付けるのをやめたところ、彼がだんだん落ち着いてきたというようなことがあります。私たちの家庭は、とにかくコミュニケーションを取ることを第一に考えて、夕食だけは必ず一緒に取って、とにかく話し掛けることから始めました。彼にだけ話し掛けるのも、彼に負担がかかると思いましたので、みんなで今日一日の出来事等をばーって話した後、「今日どうだった?」というような感じで彼に話し掛けるっていうような試行錯誤を重ねて、少しずつ関係を築いていくうちに、だんだんと彼もコミュニケーションを取ってくれるようになり、ある程度大きくなってからバイトにも行くようになりました。当然、まだ完全には治ってないんで、バイトの面接に行って「うちに来た動機は?」って言われても答えられないで、バイト駄目って言われて帰ってくるっていうことも幾つかありましたが、そのうちの一つの所がバイトさせてくれることになりまして、そこからいろんな関係もできてきまして、今は、彼は大学を卒業して、就職して、立派に1 人暮らしをしております。私は、私のうちを巣立った子ども、自立をした子の所には、行ける子の所には毎月1 回程度ですけども、様子を見に家を訪ねて、うちの家庭料理を持っていって、ご飯を食べながら、この1 カ月どうだったっていうような近況の報告を聞いたりとかしてるんですけども。あのときは何だったんだろうって思うぐらい、彼の部屋はいつも行ってもきれいに整頓されております。食事も、バイト先が調理関係のバイト先だったもので、今は自炊をしてちゃんと生活をしております。ここまで変わったんだなと思って、毎月嬉しい気持ちで彼のうちに行かせてもらっております。また、他にもこんな子がいました。彼がうちに来たのは4 歳のときでした。母親と2 人で生活をしていたんですが、病気がちの母親がどんどん大きくなって激しく動く子どもに合わせた行動がだんだんできなくなってきて。また、子どもも、そんな母親やこの状態にすごいストレスを感じてっていうような状態だったそうです。彼は、母親が入院することを機にして、我が家に来ました。どんな関係であれ、唯一の家族である母親と急に離れ離れになったり、全然今まで聞いたことのない知らない土地の知らない人のもとで、いつまで生活するのか分からない状態で連れてこられるっていうことは、弱冠4 歳の子どもの心には、相当つらかったと思います。ですから、うちに来てからしばらくは、全く落ち着きがなくて、すぐに泣いて、すぐに怒ってっていうことが、毎日続きました。しかも、それがなかなか治まらないんですね。5 分ぐらいで終わるもんだと思ったら、1 時間ぐらいひたすら泣いてたりとかっていうことが、よくありました。例えば、どんなときに泣いてたかっていうと、当初来たときは、あいさつも返事もできないような状態だったので、「こういうときは、おはようって言うんだよ。」って言ったら、「おはようって分からない。あいさつしたくない。」って言って、そこから泣いて怒るんですね。また、スーパーに買い物に行くと、とにかく走り回ります。たまにいますよね、スーパー走り回ってる子どもとか。あれが、もっと速いというかすごい状態です。それを「ぶつかるでしょ。危ないでしょ」って言って注意すると、その場で泣いて怒ります。また、例えば、ご飯ができて、「ご飯ができたよ。食べよ。」って言うと、「今食べたくない。」って言って、泣いて怒るっていうような状態でした。私たちは、とにかく彼の言葉に極力耳を傾けようと思いまして。また、ささいなことでもほめるように心がけてみました。また、規則正し23 University of NIIGATA PREFECTURE