ブックタイトル平成28年度公開講座記録集

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平成28年度公開講座記録集

平成28年度 新潟県立大学 公開講座 新しいつながりのかたちを求めては今はさすがに続いていませんけれども、かつてはそうでした。今は、1 軒、2 軒に1 つ、必ず大きな投雪機があります。天野さんの家にはそれがないので、近所の方が、自分の家をぐるっとやるついでに、落ちた雪を飛ばす作業などをしょっちゅうやってくれています。自分があそこで生きられるだろうかということは、誰しも考えますが、皆、自信があって入ったわけではないと思います。佐藤さんがおっしゃった言葉でいえば、「魅力」を感じたことがきっかけで中に入って、そこで地元のおばあさんやおじいちゃんとしゃべったりするなかで、だんだんと親しんでいく。そんな感じですね。●伝統的な生き方を10年で学びとるという希望小林:それからもう一つは、『阿賀に生きる』の製作委員会の代表の大熊孝さんが、「小林さん、今度の映画が表現しているは、『阿賀に生きる』もそうだけれども、人間の魂の帰る場所ではないか」という言い方をされていました。「人間の魂の帰る場所」というのは、群馬県の上野村という山村に住んでいる哲学者・内山節さんの言葉なのですが、大熊さんは映画を見て「それを実感した」と言っていました。また、もう1 つこんなことをおっしゃいました。この辺りには縄文の遺跡がたくさん出ているのですが、縄文人の人生はだいたい30歳ぐらいじゃないかと言われています。ですから、少し伝統的な生活スタイルを受け継ぐのに20年もかかったのでは受け継げないわけですよね。10年ぐらい、つまり人が10歳になったら、大体その村の暮らし方、生き方が分かるというぐらいでないと30年間の人生が成り立たないわけです。そうすると、木暮さんがちょうどあの地域に暮らし始めてから10年ぐらいです。木暮さんは全く何も知らないところから始めて、10年ぐらいで村の人とほぼ同等の暮らしぶりができるようになっている。大熊さんは、そういうことを見て、「暮らし方が10年で学びとれるというのは、本当なんじゃないか」というようなことを言っておりました。●若者たちに見られる新しい感性小林:また、私の知り合いに、「3.11」という5 年前の非常に大きな事件をきっかけにして、村での暮らしを始めた女性がいます。『狩猟女子』という本を出している畠山千春さんという方です。彼女は、27歳のときに東京で「3.11」を体験し、本当に怖かったそうです。皆さんが考える以上に東京もはげしく揺れたようです。彼女は、一晩中真っ暗な中で、マンションで余震に耐えながら過ごしたそうなんですね。そして、それまで会社勤めをしていたのですが、そのような体験をきっかけに、彼女は村に入って生活するようになります。九州の福岡にある村で、一軒の家を若者でシェアして暮らし始めるのです。村で生活するようになると、イノシシやいろんな動物が出てきます。かつて村には狩猟をする人がいたわけですが、今はもう皆高齢でできない。それで、彼女は、村の人から、「お前さん、狩猟免許を取ってくれないか」と頼まれるわけです。そこから彼女は狩猟を学ぶことを始めます。狩猟というのは鉄砲でどんと撃つことだけではなくて、罠を仕掛けることもそうですし、動物の皮をはいだり、なめしたりもします。彼女は、今は手作りの革バックを自分で作って売っていますが、そのような自分の体験をぜひ若い人たちにも伝えたいということで、ワークショップも開いています。例えば、鶏を絞めて、解体するワークショップですね。鶏の首をはねて、血を出し、羽をむしるというものです。そういうワークショップを開くと20人ぐらいの若者、男女がすぐ集まるそうです。さきほどの話に出た内山節先生が、ご自身が立教大学で教えた経験から、「今都会の若い人たちのざっと4 割は、田舎暮らしに憧れている。ただ、それを実践に移すかどうかは別だが」とおっしゃっていました。われわれの子ども時代、青年時代は、右肩上がりの高度経済成長の中で「都会に行く」というベクトルが強かったのですが、今はもうそれだけではないようです。●農業のあるべき姿とは小林:しかし今の政府は、小さな村々を切り捨てようとしています。例えば、大手コンビニチェーンの「ローソン」が新潟市の「農業特区」を活用して設立した特例農業法人「ローソンファーム新潟」が米作りをしています。そこでとれたお米がローソンのおにぎりになる。そうすると、これまで農民たちは自作農として農業をやっていたわけですが、今や農業は賃労働になりつつあるわけです。だから、今、University of NIIGATA PREFECTURE 8