ブックタイトル平成26年度公開講座記録集

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平成26年度公開講座記録集

Essay「新潟における食の風景」FOODSCAPE IN NIIGATA PartⅡ解題山中 知彦2 年間にわたった公開講座「新潟における食の風景」を今振り返ってみると、昨年度は新潟で生まれ育った3 名の個性的な起業家が、異分野から転職し食の世界を切り拓いた話で、未知数だったこのテーマの可能性を示してくれたように思う。その拓かれた窓からの視界に魅せられた地域連携センターの運営委員たちは、今年度も躊躇することなく同じテーマでの風景の展開に賭けた。今年度の「食の風景」は第1 回でいきなり、日本海から大佐渡の山に吹き付ける波しぶきを含んだ風雪が、年月を経てミネラルを含んだ湧水として出現する話から始まった。地元の伝説によれば、京都の石清水八幡宮と両津湾と小佐渡東岸の強清水にある2 カ所の湧水が分霊によって繋がっているという。さらには、廃校となった小佐渡西岸の西三川小学校を「学校蔵」と称して、水はもとよりすべての素材からエネルギーまで100%佐渡産の酒を仕込み、味わう挑戦的なプロジェクトに話は及んだ。第2 回の「食の風景」の舞台は、信濃川と中ノ口川が形成する輪中地帯に移り、享保年間(1716~1736年)からこの地に伝わる梨栽培の秘伝書『梨栄造育秘鑑』の存在や、その後の取り組みが紹介された。そして果樹栽培の伝統を受け継ぎ、観光果樹園としての立ち上げから産地の生き残りをかける現在の戦いまでが赤裸々に語られ、さらに燕三条「畑の朝カフェ」という地域イメージ・ブランディングの中で果樹栽培の付加価値を高め、多くの若者の共感を獲得しつつある実験的な試みも紹介された。最後の第3 回では、40万年前に苗場山麓の隆起と信濃川の浸食によってできた河岸段丘に降り積もる雪の風景から話は始まった。雪に閉ざされる冬の間、雪の恵みで育った美味しい野菜たちを加工して食卓に届けたい。地域に伝わる精進料理や伝統食の素直な味わいを、農家レストランの減塩メニューで堪能してもらいたい。この冬初めての大雪が降った翌日に、長野県に接する津南町と新潟市からはせ参じた農家のお母さんたちの思いが会場に充満し、試食品の美味しさとともに参加者を幸福感で包んだ。佐渡の湧水、輪中の土を運んだ洪水、津南の豪雪と、各回の「食の風景」に共通する「水」の存在と人々の努力の歴史が浮かび上がってきた。話は変わるが、1 年間私の講義を聴講してくれた高齢の特別受講生から、先日割り勘で一献に誘われた。万代の居酒屋で、話はJAZZから海外旅行、そして新潟県人気質へと盛り上がり、「一昔前の新潟では冬の間、雪によって閉ざされた県境を越えることは想像できなかった」という話が、酔った私の脳裏に刻まれた。日本海の荒波と急峻な稜線に囲まれた新潟県域は、大宝律令(701年)以来の越後国と佐渡国が変わることなく踏襲されてきた。そして、変わることのない信濃川と阿賀野川の流れによって育まれてきた雪国の土地に、人々は生活を営み続けてきた。その原風景をベースに、さまざまな「食の風景」が継承・展開されているのだと思った。ライナーノーツはこれくらいにして、ここからは各回登壇者が奏でた3 つの楽章の記録(record)と各運営委員の間奏をお楽しみ下さい。第1回会場風景第2回会場風景第3回会場風景1 University of NIIGATA PREFECTURE