心に刻む歴史 ドイツと日本の戦後50年
ワイツゼッカー前独大統領講演全録
東京新聞戦後50年取材班編 東京新聞出版局
大戦中ヒットラーの暗殺事件に加わった経歴を持つワイツゼッカー氏は、84年からドイツ連邦共和国第6代大統領となり、94年まで在任しました。
ナチス・ヒットラーが行った残虐行為についてドイツの国会で国民に語った彼の言葉は全世界に大きな反響を巻き起こしました。そのワイツゼッカー氏が日本で行った講演の記録をブックレットにしたものです。同じ敗戦国でありながら、週35時間労働でゆとりのある生活を目指し、軍隊の中にまで「人道上おかしいと思ったら上官命令でも背いてよい」という法まで持っているドイツ、過労死が国際用語にまでなり、先進国一長い労働時間の日本、どこでなにが違ったのか、それを読み解く一つの鍵がこのブックレットの中に隠されています。
ゆたかな国をつくる 官僚専権を超えて
宇沢弘文 岩波書店
宇沢弘文氏は現在71歳。あのヨハネ・パウロ二世がRerum Novarum(革命)というEncyclical(回勅でしょうかね)をつくる際に問い合わせをしてきた学者です。宇沢氏が30年以上もその目で見、集めた資料を基に水俣病から農業問題、金融から教育、環境問題までそれはそれは幅広くバッサバッサと切っていく、緻密かつ豪放を絵に描いたような著書です。
ですます調で書かれ、学生のみなさんに親しみやすい本になっているかと思います。大学時代、こういう本も読んでみて下さい。ほーと驚かされるさまざまな事実、そういうことに気がついていくために必要な知識を得たいと思っていただければしめたものです。
人はなぜ騙されるのか 非科学を科学する
安斉育郎 朝日新聞社
立命館大学で自然科学概論を教え、同時に立命館大学国際平和ミュージアムの館長も務めている安斉先生の講義はいつも満員御礼です。東が早大の大槻教授とすれば、西は安斉教授、その安斉先生が占星術からサイババまで単純に「ウソだ」というだけではなく、なぜそういうものをひとは信じるのか、長年の研究の成果を生かして楽しい文章で読ませてくれているのがこの本です。「金縛り」にあって困っている人、この本が効きます。
わが住む村
山川菊栄 岩波文庫
本書は、東京生まれの著者が、東海道の藤沢宿にほど近い今の神奈川県藤沢市の農村に移り住み、そこで村人から聞いた昔の生活を記録したものである。二十世紀も終わろうとしている今、今世紀の日本人の生活の変化には驚くべきものがある。過去がどうあったか、またどう変わって来たかを、歴史の表面に表われる政治・社会の事件だけからではなく、庶民の暮らしを通して知ることが必要だと思っている。そのための一書として推薦する。なお、著者が女性であることから、女性の視点がそれとなく入っていることも良いと思う。
遺伝子できまること,きまらぬこと
中込弥男 しょう華房
生活習慣病をはじめ,さまざまな病気や性格,方向音痴など、あれもこれも遺伝子で決まる? 遺伝子と環境の関連は? などなど。。。
最新の情報を基に、科学的にわかりやすく検証されています。
思わず納得の1ページも。。。食材の常識が変わる本-別冊宝島436-
別冊宝島編集部 宝島社
少し前にベストセラーになった「買ってはいけない」とそれにまつわる論争は、食品を科学的に理解する姿勢を養う上では格好の機会になったように思います。近年の食品の多様化とそれにともなう多種多様な「表示」。その「表示」のもつイメージにはどうしても振り回されがちです。しかし、よくよく見てみると、なんか変だな?と思うものも少なくありません。たとえば、「和牛」「国産牛」「J-ビーフ」ってどこが違うの?とか、「成分無調整牛乳」とわざわざ銘打つからには牛乳の成分調整ってあたりまえだったの?そういったさまざまな身近な食品の疑問について、わりと中立的な立場で書かれた本です。
日本人とユダヤ人
イザヤ・ベンダサン(山本七平) 角川文庫
かなり以前に出た有名な本なので読んだ方も多いでしょうが、優れた日本人論と思いますので、まだの方はぜひどうぞ。この本は最初の章の「日本人は水と安全はタダだと思っている」という部分ばかりが国防論議にからんでよく引用されますが、それ以外に今の日本にも通ずる面白い内容がたくさんあります。とくに「日本教」という考え方は日本における宗教を考える上で興味深いと思います。
五分後の世界
村上 龍 幻冬舎文庫
作家、村上龍の活動は最近のJapan Mail Mediaにおける金融・経済の実験的情報発信など多岐にわたっています。この人が少し前に書いたSF小説。それまでにエッセイで「なぜ今の日本はこのようになったのか」というようなことに関していろいろ書いていましたが、それに関連して築き上げた、今とはまったく違う日本の物語です。戦闘シーンの描写が結構刺激的で抵抗のある人もいるでしょうが、興味深い内容と思います。
これを読んで面白かったら、partIIの「ヒュウガ・ウイルス」(幻冬舎文庫)もどうぞ。市民科学者として生きる
高木仁三郎 岩波新書
最近「市民の科学」とか「市民の化学」という語をよく目にします。今までの「科学」とはいったい何だったのか、問い直されていると言っていいでしょう。原子力資料室を立ち上げ、もう一つのノーベル賞"ライト・ライブリフッド賞"を1997年に受賞し、現在は若い科学者のために高木学校を運営する高木さんの自伝的科学論。東海村臨界事故の直前に発売されたこともあって、大きな反響を呼んでいる一冊です。
研究者時代に、微弱放射能測定のために自然放射線遮蔽材の鉄を探したところ、地球上の鉄が無数の核実験による人工放射能に汚染されてしまっているという話は衝撃的です(結局は戦艦「陸奥」のサルベージした鉄を使用)。これは地球上の生物がみな様々な人工化学物質に汚染されていることと共通しています。"汚れちまった"私たち生物は、そのことだけが平等になってしまったのかも知れません。
同じ著者による「市民の科学をめざして」(朝日選書)、「科学は変わる」(現代教養文庫)、「宮沢賢治をめぐる冒険 水や光や風のエコロジ−」(社会思想社)などもお薦めです。異性愛をめぐる対話
伊藤悟&簗瀬竜太 飛鳥新社
あるゲイカップルが編集した対談集です。著者がゲイというと、「じゃあ、ちょっと手に取るのに勇気がいるような、アブノーマルな世界についての本かしら」と怪しまれる(あるいは、期待される)方がいらっしゃるかもしれませんが、これは「そのような本」ではなく、タイトルにあるように、「多くの人が普通と思っている世界(異性愛)」についての本です。より正しく言うと、「普通」とか「常識」とかで語られる世界に実際には様々な矛盾やひずみが存在しているということを知ることで、既成の価値観を見直そう、そしてより広い視点から「自分らしさ」や「人を愛すること」について考えてみよう、というメッセージを持った本です。「異性愛」にしか興味のない人にもおすすめします。
クオ・ワディス(全3巻)
ヘンリク・シェンキェヴィチ 岩波文庫
暴君ネロの君臨するローマ帝国を舞台に、キリスト教の迫害を描いた長編小説。全編まるで映画を見ているような鮮やかな筆致。でも主題は歴史というより人間の魂です。激動の時代の中で、登場人物がどのように変容していくか、人間の弱さとその魂の本質的な気高さが、見事に描かれています。ちょっと長いですが一晩で夢中で読み、途中で幾度も涙してしまいました。1905年ノーベル文学賞受賞作。
愛するということ
エーリッヒ・フロム 紀伊国屋書店
これは、お手軽な恋愛術の本ではありません。私達は往々にして、様々な人間(特に恋愛)関係の中で、相手をコントロールしようとしたり、自分の思い込みで縛ったりしてしまいますが、ほんとうに人を愛するということは、そういう「駆け引き」やエゴとは違う次元のものだとこの本は教えてくれます。私の恋愛を支えてくれた大事な1冊です。
調べる・身近な環境
小倉紀雄、梶井公美子、藤森眞理子、山田和人
講談社ブルーバックス
私たちの生活環境を調べてみましょう。 調べることによって「環境」について深く理解することが出来ます。新潟の川の水や大気は、きれいなのか、汚いのか調べてみましょう。
アンダ−グラウンド
村上春樹 講談社
1995年3月20日の地下鉄サリン事件の約9カ月後から1年間にわたり、丹念な共同作業のもとでまとめられた、60名(非常に困難な作業で連絡の取れた方々のうち、了承の得られた僅か42.9%!)に対するインタビュ−の(真に)労作。
『人々の語った言葉をありのままのかたちで使って、それでいていかに読みやすくするか』という視点で、極めて厳正な方法論に基づいて、インタビュ−イ60名のその時・それからが、727頁にわたって淡々と真摯に記され、胸を打ちます。
『私たちは何らかの制度=システムに対して、人格の一部を預けてしまってはいないだろうか?もしそうだとしたら、その制度はいつかあなたに向かって何らかの「狂気」を要求しないだろうか?』
『人々の語る話にしばらくのあいだ耳を傾けていただきたい…。いや、その前に、まず想像していただきたい。』
二十歳のころ
立花隆+東京大学教養学部立花隆ゼミ 新潮社
大学2年から3年までの長い春休みの読書三昧の中で、とくに胸ときめかせて読んだ懐かしい一冊です。1984年10月から8ケ月半、朝日新聞小説欄に連載されたものが反響を呼び、文庫版にもなりました。
『取材にあたっては礼を失するな』という立花氏の教えのもと、54名のゼミ生が68名の有名無名の人生の先輩への取材に果敢に挑んだ、意欲作。
『ラポ−ルを作るにはどうすればよいかというと、まず相手を理解することである。』『青春時代を取材するというのは、「謎の空白時代」を取材するということなのだ。』と、立花氏は長い序文を寄せています。
(あの方が、あんな事を…)と思わず読み進め、最後には、生年順登場人物索引(ちなみに、1917年から1975年まで)・昭和史略年表の付録までついて、いたれりつくせりの内容となっています。
きらめく言葉の数々の中から、あなたにとって大切な何かを、またもうひとつみつけてください。どうぞ、665頁にわたるこの本を、存分に楽しまれますように!ファウスト
J.W.ゲーテ
1999年はドイツの大詩人ゲーテの生誕250年にあたっていました。それを祝う出版があい次ぎました。ご紹介したいのは、なかでも、ゲーテが20代から没する80代まで書きつづけた『ファウスト』という長大な戯曲です。ドイツに古くからあったファウスト伝説は、天才ゲーテの圧倒的な力業によって、人間と宇宙と生命を縦横に描き尽くす世界文学へと変貌を遂げました。正確な訳ではあるのだろうけれどまるで面白くない相良守峯訳(岩波文庫)。誤訳だらけだけれど名訳の誉れ高い森鴎外訳(ちくま文庫)。これらに並んで、記念の年にあたる1999年、柴田翔氏の訳(講談社)と池内紀氏(集英社・ただし第一部のみ。第二部は2000年初めに出版の予定)が刊行されました。19世紀の初頭にはまだ劇はすべて韻文で書かれるのが常識でした。芝居とは長大な詩だったのです。柴田翔氏は作品を詩として訳しました。池内紀氏はそれを断念して流麗な散文に訳されました。それだけでも比べて読んでみるに値する訳業です。
ファウスト/ネオ・ファウスト
手塚治虫 朝日文庫
手塚治虫は『ファウスト』に強い関心を持っていたのでしょう。『ファウスト』に取材した作品を3作も残しています。そのうちの二つ、「ファウスト」と「百物語」が『ファウスト』に収められています。三作目が「ネオ・ファウスト」。それぞれに手塚独自の読み込みと解釈と翻案がほどこされた興味深い作品に仕上がっています。原作の翻訳と合わせて読んで見てください。夜と霧−ドイツ強制収容所の体験記録−
ヴィクトール・エミール・フランクル みすず書房
アウシェヴィッツから奇跡的に生還した精神医学者の手記である本書の読後感は、けっして陰惨なものではない。こういっては妙な感じがするかもしれないが、それは不思議な開放感と静謐さに満ちている。アンネ・フランクの日記と同種の感慨をもたらしてくれるものといってよいかもしれない。
本書は、最悪の限界状況下における人間の姿の記録であると同時に、人間の善意への限りない信仰の書でもある。アウシェヴィッツで両親・妻・子供を失った後でもなお、フランクルは、人間精神の自由さについて語ることができたのである。座右においてしばしば手にとる類の本ではないと思うが、生涯の友となりうる、そんな稀有な本である。ニャーンズ・コレクション
赤瀬川原平 小学館
世界の名画は数多くあるので、どれをみていいか迷ってしまうことはないですか?画家で選んでいっても多すぎるし、時代で選ぶのも難しいと思う方は、ネコで選んではいかがでしょう?
さまざまな時代、さまざまなスタイルの絵の中にネコはひそんでいます。この本は、絵のどこかにネコが描かれた名画を30点集めた画集(?)です。非常に有名な画家の作品も、一般にはあまり知られていない画家の作品も取り上げられています。比べてみるとネコの描き方や役割もまったく異なって描かれています。
この本をきっかけにネコについて考えるもよし、ネコを通して新たに知った画家の作品にもっと触れてみるもよし。ネコの描き方の違いから、背景となる文化や時代を考えてみるのもおもしろいと思います。そしてゆくゆくは、ここにあげられたネコの絵の実物をみに、いろいろな国に旅することもできます。
ネコから世界が広がるかもしれない、薄いけれど、ちょっとあなどれない本なのです。アルジャーノンに花束を
ダニエル・キイス 小尾 芙佐訳 早川書房
精神遅滞者チャーリー・ゴードンは32歳の男性で、知能の遅れを仲間からからかわれながらも、パン屋で働いている。頭が良くなりたいと望む彼は、まだネズミの脳にしか施されたことのない、脳の手術を受ける。その後、彼の知能の発達はめざましく、7ヶ月後には二十カ国語を喋り、あらゆる分野の学説を批判するほどの天才に変わる。その過程で、肉親や仲間から過去に受けた虐待やいじめ、手術担当の教授らの虚栄、欺瞞などが彼の眼によって暴露されていく。彼に対する周囲の態度も変わっていく。しかし、彼の無意識の中に閉じこめられていた、昔のチャーリーの影が徐々に大きくなっていく。
チャーリー自身が記録する報告書の文体や内容に徐々に現れる知能の変化に注目。精神遅滞者に対する偏見について考えさせられた。アルジャーノンは同じ手術を受けた二十日ネズミの名前。大阪ことば学
尾上圭介 創元社
気鋭の文法学者が、愛する大阪弁について語った本。
これがそのまま大阪人の特徴や大阪の文化の本質について語ったものとなっている。
敬語はこわくない 最新用例と基礎知識
井上史雄 講談社現代新書
これはよくある敬語の実用書ではない。敬語の変化の大きな流れを、実際の調査データに基づいて概説したものである。誤用の具体例もあげてあるので、正しい言い方を知りたい方にも役に立つ。現代日本語の動態を知りたい人にもお勧めする。
日ソ戦争への道
B.スラヴィンスキー 共同通信社
ノモンハン事件から終戦までの詳細な日ソ関係を検証した画期的な書。ロシア側から見た対日参戦の内幕は興味深い。
盗まれた夢
A.マリーニナ 作品社
ソ連解体後のロシア社会の混迷を鋭く描いた、現代ロシアで大人気のミステリー作品。
英文 大橋儀隆
ヨーロッパのキリスト教美術
エミール・マール 柳、荒木訳 岩波書店
美術がある時代の総合的な代弁者になり、かついかなる芸術を鑑賞するにも必要な判断力と感性を培うのは知識と訓練だということを教えてくれる凡百の類書の中では白眉の書である。和訳も優れていて、英訳よりも原文を読みたくなるでしょう。最近、文庫本二巻でも出版されている。
人生をいかに生きるか
林語堂 阪本勝訳 講談社学術文庫
人生論と言うとすぐに眉をしかめないで、読んでみてください。西欧文化、文明を熟知している中国人が、中国の伝統を基盤にして西欧の文化、社会をユーモアとウィットあふるる口調で論じたものである。この東洋の生んだユマニストの考え方や見方を知るのは、人生をみる素晴しい「色眼鏡」の一つになると思う。有名な英文法の著書の説明の仕方と例文に感銘を受けた方は納得がゆくであろう。
憲法と国家−同時代を問う−
樋口 陽一 岩波新書
夫婦で料理を作って楽しむダンディーな紳士だが、日本語よりもフランス語の方が上手だと思えるような難解かつ奥深い文章を書く著者が、われわれ一般人のために精一杯わかりやすく、憲法や社会や国家について書いてくれた本です。スゴイなー、とため息が出てきます。
フェルマーの大定理が解けた!
足立 恒雄 講談社ブルーバックス
法律学が対象とするのは、どちらかと言えばグウタラな人間や、決して理想的であるはずもない社会の、さまざまな問題なので、勉強して疲れることがあります。そんな時、人類の愛と正義と平和のために孫悟空が戦うドラゴンボールZや、表題の本を読むとホッとします。170頁の「7も合同数なのだから、有理数を3辺に持つ面積7の直角三角形があるはず」が解けた時には、生きててよかったと思いました。
円とドル
吉野 俊彦 NHK出版
「為替」というと大変むずかしいとの先入観を持つ人たちが多いが、本書はその最良の入門書である。著者は、「円とドル」の関係がいつごろから始まり、日本経済に大きな影響を持つようになったのはいつごろからかを探ることによって、現在「円」が直面している問題を見事に明らかにしている。
不思議の国 アメリカ
松尾 弌之 講談社現代新書
アメリカという国で州境を越えると、まるで別世界に入ったような気がする。売上税の税率や交通法規も違うし、アルコールを飲んでよい年齢も異る。中央集権的な日本に住んでいる者にとっては想像もできないような国柄なのである。一読をおすすめする。
0歳児がことばを獲得するとき
正高信男 中公新書
子育ては親が・・・と観念的に言われることは多々あります。この本は、観察を通して、授乳時の母子間交流(ヒトとサルの比較)、おうむがえしの意味、母親語(後に別の本では、育児語と筆者は呼んでいる)の役割等を明らかにしようとしています。だからといって、子育ては母親の手で!と強くいうつもりはありません。何もしゃべらなくても、言葉の基礎は0歳の頃から作っていることを理解し、保育者となった場合あるいは親となった場合に子どもにどんな環境を提供するかをあなたが考える一助としてほしいと思います。
幼児の笑いと発達
友定啓子 勁草書房
保育園での0歳から6歳までの幼児の生活を観察し、笑いが生じ場面や様子をもとに、笑いの発達を考察しています。
からだの快と結びつく笑いから「わかる」など知に伴う笑いへ、また人間関係の中で生じる笑いの変化など、笑いを主軸としながらも、笑い以外の部分の子どもの発達を実感を伴って知ることができます。笑いって何だろうと考えさせてくれる一冊でもあります。
イメージを読む−美術史入門−
若桑みどり 筑摩書房
現在、千葉大学で教鞭をとる筆者が北海道大学で歴史や哲学や文学や建築を専攻する学生に対して行った集中講義をもとに書き下ろした一冊。美術史というと難しい感じがするかもしれませんが、一枚の絵の中に隠された物語を丁寧に解き明かす読みやすい本です。バチカンのシスティーナ礼拝堂にあるミケランジェロの天井画についての話は、システィーナ礼拝堂のHP(http://www.christusrex.org/www1/sistine/0-Tour.html)で実際に天井画を見ながら読むと、より理解が深まるかもしれません。海外旅行で美術館を巡ろうと思う人はまずこの本から美術史理解をはじめてはいかがでしょうか。
シスター・キャリー(上)(下)
ドライサー 村山淳彦訳 岩波文庫
この小説は1900年に出版された。丁度百年前の世紀末、中西部の田舎町から都会の生活にあこがれてシカゴに出てきた娘キャリーが、貧しい靴工場の工員から、やがてニューヨークで女優として大成するまでを描く。物語の最後、物質的に豊になっても心満たされないキャリーの姿はそのまま二十世紀を終えようとしている我々自身の姿と重なるのではなかろうか?今世紀を振り返り、二十一世紀を見据える意味でも是非読んで欲しい作品である。
遠景のロシア 歴史と民俗の旅
中村 喜和 彩流社
一冊の優れた本が手の中にありさえすれば、時間や空間をこえて旅をするのもとても簡単です。この本は、私たちを、400年から1000年ほど昔のロシアへ連れて行ってくれます。夫を殺されて、冷静に冷酷に復讐を遂げる后妃や、人間なのか鳥なのか、正体不明の盗賊や、龍は退治できるのに美女に弱くて術中に陥ってしまう騎士などに会いたくなったら、この本を開いてみてください。
丸亀日記
藤原新也 朝日文庫
朝日新聞の連載エッセイを集めたこの本では、著者の切り口の鋭さは、他の著作に比べるとやや抑えてられているところがありますが、その分読みやすくなっていて、初めての人にもおすすめです。これを読んで気に入ったら、「僕のいた場所」(文春文庫)や「東京漂流」(新潮文庫)も読んでみてください。
ダーシェンカ
カレル・チャペック 保川亜矢子訳 SEG出版/伴田良輔訳 新潮文庫
「ダーシェンカ」は、チェコの作家・チャペックの家に生まれたフォックステリアの名前です。この本は、愛らしいダーシェンカの写真と、さらに愛らしいイラストと、チャペックが彼女に聞かせるために作ったおはなしでできています。犬の好きな人だったら、きっと手放せない本になります。原語であるチェコ語から翻訳し、初版本と同じ装丁を施したSEG出版の方を手に入れて宝物にしてもいいですし、新潮文庫で気軽に楽しむのもいいでしょう。