特集 ワンコイン本

500円玉一枚でこんな本が買えるなんて!
感激のワンコイン本を集めました
本体500円、税込525円の本もありますが
生協で買えば
ちゃんとおつりがきちゃうのです(^^)

※価格は2007年3月現在のものです

 食物栄養専攻 石原 和夫

杉浦日向子 (新潮文庫)

 

一日江戸人

 現代の江戸人・杉浦日向子による、実用的かつ、まことに奥の深い江戸案内書。江戸美人の基準、三大モテ男の職業、衣食住など、江戸の人々の暮らしや趣味趣向がこれ一冊でわかる。また、漫画家でもある著者の自筆イラストもふんだんに盛り込まれ、居ながらにして気分はもう江戸人だ。(本書カバーの案内文より、改変引用) 楽しい文庫本ですよ。

定価460円(税込)

 国際教養学科 田中 景

ジョン・スタインベック (新潮文庫)

 

ハツカネズミと人間

 20世紀初頭のカリフォルニア。農場を転々と渡り歩く2人の労働者。小柄で賢いジョージと力持ちで子どものように純粋なレニー。対照的な2人は、いつか小さな農場と家を持ち、ウサギを飼って暮らすという夢をあたためている。2人はある農場にたどり着き、そこに働く様々な人々と出会い、やがてある出来事がおこって…。スタインベックの人物や情景の描写は穏やかで、そして物語の運びはとても淡々としています。なのに、最後には自分でも驚くほどに心動かされ、涙が止まらなくなっていることに気が付きます。

定価340円(税込)

 国際教養学科 柳町 裕子

宮沢 賢治 (新潮文庫)

 

新編 銀河鉄道の夜

 「銀河鉄道の夜」をはじめ、賢治の名作が14作品も入っているだけでなく、それぞれの作品に解説が付いていて、難しい言葉については親切な説明があり、巻末には賢治の詳しい年譜、そして「星めぐりの歌」の楽譜まで載せていて、「この値段にしてこの充実感!」といつも感嘆し、出張先などでつい買ってしまって、うちに3冊あることが判明した本です。

定価420円(税込)

星 新一 (新潮文庫)

ボッコちゃん

 ショートショート(とっても短い小説)の名手・星新一の自選アンソロジーです。ワンコインで50作品も入っています。何年前からか、星新一を知っている学生にほとんど出会わなくなりました… 話題にできないと、なぜだか妙にさびしくなってしまう作家です… なので読んでおいてくださるとうれしいです。

定価500円(税込)

長沢 工 (新潮文庫)

はい、こちら国立天文台―星空の電話相談室

 東京の三鷹市にある国立天文台には、一般の人からの電話や手紙による問い合わせに答える広報普及室というのがあります。これは、そこで働く(かなりキャリアのある天文と地震の専門家だけれど、子どもたちやマスコミからの質問に対して丁寧に、そして正確に答えようとする努力を惜しまない)著者が、その仕事や仕事場の様子についてエッセイ風に語っている本です。文体に著者の人柄が滲み出ています。最初は、「天文」という言葉のイメージと同様、とっつきにくい人かな、と感じるのですが、読んでいくうちに、「広報普及室に遊びに行ってみたいな」といつのまにか思っている自分に気づきました。

定価460円(税込)

ヘンリー・ジェイムズ (新潮文庫)

ねじの回転

 最近、日本のある作家が同名の小説を出して売れているようですが、こちらが本家です。ぜひ読んでください。ぞぞぞっとする小説です。広いお屋敷に幽霊が出ます。そのシチュエーションも怖いですが、もっと怖いのは、この小説を読んでいると、「幽霊がいる」と信じ込む主人公の心理の奥底に迷い込み、いつしか抜け出せなくなっていることです。

定価460円(税込)

 国際教養学科 石川 伊織

鴨長明 (岩波文庫)

 

方丈記

 「ゆく河の流れは絶えずして……」って、古文の時間に暗誦させられませんでした? でも、原文は実はこうではないのですよ。本当は、「ユク河ノナカレハタエスシテ……」。なに? 片仮名にしただけじゃないかって? そうです。それだけ。でもそれが重要なんです。だって、片仮名だってことは、漢文の読み下し文だっていうことですから。つまり、オトコの文学ね。漢字平仮名混じりで書かれた、卜部兼好(吉田兼好)の『徒然草』が、オンナの文学を手本にしていたのとは好対照です。岩波文庫の版には、漢字平仮名混じりの読みやすい文と、一番古い写本から起こした漢字片仮名混じりの文と、その写本の写真版リプリントが収録されてます。ウソかホントか、この写本、「右一巻者鴨長明自筆也」だそうです。残念ながら、好対照の『徒然草』はとっても長くて、500円では買えません。

定価525円(税込)

オマル・ハイヤーム (岩波文庫)

ルバイヤート

 著者は11世紀のペルシャの詩人。この頃のヨーロッパは文化的にも経済的にも、世界の中での後進地域に過ぎませんでした。イスラム諸国やアジアの方がはるかに高度な文化を誇っていました。ルバイヤートとはやペルシャ語で「四行詩」という意味。世の無常と生の無意味を歌う美しい詩句には、お前は何のために生きているのだ? と問いかける厳しさがあります。ところで、「まあ、一杯飲め!」という詩句がたくさん出てくる詩集なのだけれど、イスラムって、お酒は飲んじゃいけないんじゃなかったっけ? 戒律の理解と実際というのにもいろいろあるんです。原理主義ばかりがイスラムじゃない。それに、原理主義って、もともとゴリゴリのキリスト教過激派に付けられたあだ名だったんです。ブッシュの宣伝に乗せられないで、もっと広く文化を見てみましょう。

定価 483円(税込)

ソポクレース (岩波文庫)

アンティゴネー

 ソポクレースの『オイディプス王』と『アンティゴネー』はギリシア悲劇を代表する作品です。で、こちらはオイディプスの物語の後日談。オイディプスが自分の母だったイオカステーとそれとは知らずに夫婦になって、このふたりの間に生まれたのが、娘のアンティゴネーでした。テーバイの国の王位を争って相打ちの結果死んだ兄を、アンティゴネーは、「国家に反逆して死んだ者は、たとえ親兄弟といえども埋葬してはならない」という王の命令を無視して埋葬します。「死者の埋葬こそは族の務めであり、これは王の命令なんかよりもはるか昔から、神々によって命じられてきた掟だ」というのです。家族と国家、死と弔い、女性と男性といったテーマがちりばめられ、後世の研究者たちによって様々に解釈されてきた問題作です。読み手の問いかけに応えて、いかような解釈も受け入れるような、変幻自在な緊張感と美しさを持つ劇的な作品です。あなたなら、どう読みます? 『オイディプス王』も500円以内で買えます。1時間で読める古代ギリシアは、すぐそこ!

定価 378円(税込)

フランツ・カフカ (岩波文庫)

変身・断食芸人

 ゴキブリとカブトムシは絶対に違うし、カブトムシと玉虫も違うよね。でも、英語では、硬い二枚の羽の下に飛ぶためのやわらかい羽を二枚持ったタイプの「甲虫」はどれもcockroachです。カブトムシの力強さも玉虫の美しさも、英語的にはみんなゴキブリなわけで、これはドイツ語でも同じです。ある朝目覚めたら巨大なゴキブリになっていたグレゴール・ザムザの物語。息子がゴキブリになってしまったことを受け入れられず、ゴキブリと化した息子の存在をないことにしてしまおうとする父親。困惑する家族。最後には、自分たちのために死んでしまってほしいと家族のみんなが思うようになります。グロテスクなんだけれど、家族のある一面を暴いてはいないでしょうか。カフカは、19世紀末、オーストリア・ハンガリー二重帝国治下のチェコのプラハに生まれて、ドイツ語で作品を書いた作家です。訳書は、山下肇さんの旧訳を娘の萬里さんが改訂されたもの。ぜひ、萬里さんの「あとがき」を読んでください。テキストと真剣に向き合うということの意味が分かってきます。

定価 420円(税込)

中島敦 (角川文庫)

李陵・山月記・弟子・名人伝

 『山月記』は国語の教科書に出てきたりしているので、知っている人は多いでしょう。いろいろな出版社の文庫にも収録されています。今回、角川のものをお勧めするのは、他の出版社の中島敦作品集には収録されていない沙悟浄の物語、『悟浄出生』と『悟浄歎異』が納められているからです。悟浄は、俺は何のために生きているのだろう、人生とは何だろうか……と考え、悩んでいます。これを中島敦は「病気」と言います。『山月記』の李徴が自分の中にある激情を飼いならすことが出来ずに「病気」になり、虎に変身してしまったのと同じです。中島敦は、人間の思惟や自意識といったものを「病気」と考えていたようです。『李陵』の雄渾な筆致と、『名人伝』の飄々とした文章との中間にあって、悩みに満ちてはいるのになぜかあっけらかんとした文体は、中島敦の面目躍如といったところ。

定価 500円(税込)

アルチュール・ランボオ (岩波文庫)

地獄の季節

 一読しただけでは、ちっとも分からないかもしれません。でも、何度も音読してみてください。詩の力というのが分かります。「……まだまだ前夜だ。流れ入る生気とまことの温情とは、すべて受け入れよう。暁が来たら俺たちは、燃え上がる忍辱の鎧を着て、光りかがやく街々に入ろう……(「別れ」訳書51ページ)」。何と理解したらよいのか、いまでも読みに迷いながら、怒りがこみあげるたびに、私はこの詩集を引っ張り出します。そして、分からないながら、この一節にたどり着いて、ぐっとおなかの底に力を入れて、「忍耐で武装する」のです。怒りを語れ、ムーサよ!

定価 420円(税込)

トオマス・マン (岩波文庫)

ベニスに死す

 現実逃避のためにやってきたべネツィアのラグーンで、美少年に執着して破滅していく、老作家のお話。これがお話になりうるのは、老作家が執着しているのが美少年だからなんでしょう。もし執着の対象が美少女だったら、単なるロリコンになっちゃいますから。じゃあ、美少年の追っかけだったら、美少女の追っかけをするよりも犯罪性・倒錯性が少ないのかというと、そうでもありません。だって、主人公は、美少年に同性愛的な執着をしている自分を必死に弁解してるんですもの。弁解するっていうことはやましいからです。やましいのは、これが反社会的な倒錯だっていう思いがあるからです。しかし、それはやましいことなんだろうか。この老作家が破滅してしまうのは、行為そのものより、行為についてのやましさのせいです。では、何でこの行為はやましいのでしょうか? 謎です。

定価 420円(税込)

マックス・ヴェーバー (岩波文庫)

職業としての学問

 「とりあえず、四大に編入を……」と思っている進学志望の学生諸君には、一度は読んでもらいたい本です。学問をするっていうのはどういうことか、それを考えてからでなくては、実際、進学してほしくはないんですね。いや、別に私は「職業として」学問をしたいわけではないから……という声も聞こえてきそうですが、そういう言い訳は18歳で普通に大学を受験するときまでしか通用しません。だって、そこそこ勉強した上で、さらに何かしたいというのが、編入試験を受ける動機であるはずですから。他の就職組が実社会で労働している時に、職業につくかわりに勉強してるんだから、少なくともこの2年間は、職業として学問しているようなものです。進学するなら、「とりあえず」ではなく、本気で学んでください。学ぶことと実生活とのギャップと接点とをしっかり考えてください。

定価 420円(税込)

森鴎外 (岩波文庫)

舞姫・うたかたの記

 『舞姫』で描かれているのは、どうやら鴎外の実体験らしいということになっているのですが、鴎外はどういうつもりで、自分の留学中の不実な恋愛を作品にしたんでしょうか? 読むたびにそこが分からなくなる作品です。一説には、鴎外は本気で踊り子と結婚するつもりで、日本への渡航費用も鴎外が負担していたのに、一族や日本陸軍(何しろ鴎外は陸軍の軍医ですから)の圧力があって、不実な結果になるしかなかったのだ、とも言います。日本の近代化の使命を追った当時の知識人の国家的責任と、江戸時代以来の封建的な家制度の中での家長としての責任と、自由で自立した個人としての生。この作品の背景には、単に、不誠実で優柔不断な男の物語と言ってしまうには余る、複雑な背景があるようです。あなたなら、どう読みますか? 鴎外が言文一致の文体を開発する以前の擬古文で書かれているので、読みにくい作品ですが、一読の価値はあります。一緒に収録されている『うたかたの記』は、バイエルンのルートヴィヒ二世(シンデレラ城のモデルになった南ドイツのノイシュヴァンシュタイン城を築いた王様)の変死(自殺?)をめぐる物語。

定価 483円(税込)

 国際教養学科 黒田 俊郎

高野悦子 (新潮文庫)

 

二十歳の原点

 高校時代、とても感銘を受けた本です。読むたびに、彼女の息遣いを身近に感じ、いろいろなことを考えたものです。やさしくて激しくて、混乱しているけど理知的で、そしてとても静かな、怒りと祈りに満ちた本だと思います。説明が後になってしまいましたが、この本は、当時立命館大学の学生だった著者の1969年1月2日(彼女の二十歳の誕生日)から6月22日までのノートをまとめたものです。彼女は、22日のノートに一篇の詩を書き残し、二日後、自死を選んでいます。正直言って、この本の内容が今の若い人たちの心にすっと入っていくかどうか、とても心配なのですが、新潮文庫でいまだ版を重ねているという事実を信じて、勇気をだして紹介してみましょう。

定価 420円(税込)

 英文学科 福嶋 秩子

アガサ・クリスティ (新潮文庫)

スタイルズ荘の怪事件

アガサ・クリスティ (早川文庫)

ねずみとり

 中高生時代にミステリーにはまった。大学生のときには、英語の勉強をかねて原書でミステリーを読んだ。ペーパーバックが安く手に入るクリスティは格好の教材だった。  まずは日本語で読んでみようという人に2冊お勧めする。1冊目はクリスティの処女作で名探偵ポワロ第1作、2冊目は今もロングランが続く戯曲である。

定価 500円・525円(税込)