言語地理学のへや

言語地図作製システムSEAL 公開と情報交換の場

県立新潟女子短期大学 福嶋秩子



SEAL 7.0Jで新規の地図データを扱う方法について

(SEALユーザーズマニュアル第8版(2007)より転載)

 SEAL 7.0Jで新規の地図データを扱うときに、バグがあることがわかったので、以下で対処法を説明したい。

1 SEAL 7.0Jのデータフォルダーの構造
 SEALで言語地図を作成するためのデータの構成について、サンプルデータを例に再掲する。属性別データがあるかどうかで、データの構造が異なる。

属性別データのない場合
  c:\Seal70J\ − sample\ − main\ 言語データ
                   − Map\ 白地図データ
属性別データのある場合
  c:\Seal70J\ − sampleNiigata\ − 1998\ 属性別言語データ
                       − 1999\   属性別言語データ
                       − Map\ 白地図データ
                       − group\ グループ地図データ

     図5.1 SEAL 7.0Jデータフォルダーの構造

 地図名sampleやsampleNiigataをつけたフォルダーは、c:\Seal70J\の中におく。属性別データのない従来型のデータの場合、旧版SEALでLing\フォルダーに入っていたファイル(言語データ、はんこデータ、集計データ等)はmain\フォルダーの中におく。白地図作成用データは従来どおりMap\フォルダーの中にある。調査年次の違いなど、同じ調査で異なる属性をもつデータとして処理したいときは、任意のフォルダー名(たとえば、ここで1998、1999など)をつけて別フォルダーとする。白地図データは同様にMap\フォルダーの中におく。また、様々な言語地図を作成していくと、関係のデータファイルがgroup¥フォルダーやMap\フォルダーの中に形成される。

2 新規のデータフォルダーとファイルの作成
 SEAL 7.0Jで新しい言語地図のデータを扱おうとするときには、まず、全体のフォルダーc:\Seal70J\の下に、新しい地図名(たとえばTest)をつけたフォルダーを作る。さらにその下にmain¥とMap\の二つのフォルダー(あるいはmain\のかわりに任意の数の属性別フォルダー)を作り、これらのフォルダーの中に、まず、下記で示すようなデータを作成する必要がある。これらのデータについてはそれぞれの項目で説明するが、詳しくはマニュアルを参照してほしい。また、データの中身はsample\フォルダー、sampleNiigata\フォルダーの中にあるファイルで確認してほしい。

2.1言語データファイルの作成
 生の言語データのファイルの拡張子は.Lngである。旧版の言語ファイルを7.0Jで扱いたいときは、内容はそのままでよいが、拡張子の.dbsを.Lngに変更する必要がある。
 言語データフォルダーの中に格納されるその他の言語データファイルはデータの分析や地図化の過程で自動的に作られる。旧版の.srtファイルや.hanファイルはそのまま使える。

 dakara99.Lng "LNG"ファイル. . . . . . . . . 生の(加工していない)言語データ
 dakara99.Srt "SRT"ファイル. . . . . . . . . 出現データの種類(異なり語形)をソートしたデータ(すなわち、異なり語形一覧)
 dakara1B.Han "HAN"ファイル. . . . . . . . はんこ指定データ(どの語形にどのはんこを割り当てるか)

     図5.2 言語データファイルの一例

 この他、集計に関わるデータを保存するファイルとして、"TTL"ファイル(.Ttl)(集計1の結果ファイル)、"SUM"ファイル(.Sum)(各言語データについて集計1を行うときの語形指定ファイル)、"HTL"ファイル(.Htl)(集計1の結果をはんこ地図に表すときのはんこ指定ファイル)、"RNK"ファイル(.Rnk)(集計2の結果ファイル)があり、これらは、集計を行うと言語データフォルダーの中に自動的に作られる(sample\main\フォルダー参照)。これらも、旧版のファイルがそのまま使える。

2.2 白地図作成用ファイルの作成
属性別フォルダーのないとき
 Map\フォルダーにある白地図作成用ファイルは、以下のファイルで構成される。旧版SEALで、.mapとなっていたものと同じものである。2004マニュアルの7.2を参照してデータを作成する。旧版のデータを扱うときは、拡張子を.Smpに変更しておく。

 Line.Smp. . . . . . .曲線、直線データ (c:\Seal70J\Test\Map\Line.Smp)
 Loc.Smp. . . . . . . .地点データ (c:\ Seal70J\Test\Map\Loc.Smp)
 Kanji.Smp. . . . . .文字(漢字、カタカナ、英数文字等)と縮尺 (c:\ Seal70J\Test\Map\Kanji.Smp)

    図5.3 白地図用基本データファイル

属性別フォルダーのあるとき
 sampleNiigataのように属性別フォルダーのあるときは、Loc.Smpの代わりに、属性ごとの地点ファイルをMap\フォルダーに作っておく。ファイル名は「地図名」+「属性名」+".Loc"とする。たとえば、sampleNiigata には、"sampleNiigata1998.Loc"、"sampleNiigata1999.Loc"の2つのファイルがある。

白地図作成用作業ファイルの作成

 SEAL7.0Jでは、以上で述べた3種類の基本ファイル(@)をもとに、多種類の作業ファイル(A)が自動的に作られることになっているはずであった(図5.4参照)。しかし、現在のところ、この作業ファイルの最初の自動作成がうまくいかないというバグがみつかり、修正されていない。そこで、Aのファイルについて手作業で作成してほしい。この作業には、エディターを使うとよい。たとえば、[スタート]−[すべてのプログラム]−[アクセサリ]の中にある「メモ帳」が利用できる。[地図名]をTestとして、その方法を以下に示す。

 @ 白地図作成のための基本ファイル(旧版にあったもの)
   Line.Smp、Loc.Smp、Kanji.Smp
 A 白地図作成のための作業ファイル(7.0Jで付け加えられたもの)
  OrgLine.Lin、[地図名]Main.Loc、OrgKanji.Knj、
  [地図名]AKanji@main.Knj、OrgBmap.Blm、OrgHfont.Hfn

 図5.4 属性別フォルダーがないときの白地図用データファイル一覧(基本+作業ファイル)

 C:\Seal70J\Test\Map\フォルダーの中に、@に加えて、Aの地図ファイルをつくっておく。

ア.OrgLine.Lin
 このファイルは、曲線、直線データのLine.Smpが元になっている。SEAL7.0Jでは、線の指定の修正ができるようになり、線の太さの指定が増えた。それに伴って、OrgLine.Linのデータは、Line.Smpにもう一つ太さデータを追加したものとなる。sample\フォルダーの中にあるLine.SmpとOrgLine.Linを対比して示す。

 Line.Smp        OrgLine.Lin
 15            15
 1,249,0,0,0,0      1,249,0,0,0,0,0
 1,115          1,115
 1,112          1,112
 中略           中略
 2,48,2,3,0,0       2,48,32768,0,3,0,0
 以下略         以下略

 図5.5  sample\フォルダーにおけるLine.SmpとOrgLine.Linの比較

 赤色部分は、それぞれ1番目・2番目の曲線・直線の設定データである。Line.Smpでは、順に、線番号, データ数, 線の色, 線の種類, オフセット値(x0, y0)となっていた。OrgLine.Linでは、3番目の「線の色」のデータが0-15の番号による指定からRBG関数を含む数字に変わり、4番目に「線の太さ」のデータが追加されている。
 SEAL7.0Jを立ち上げて白地図データを読み取ってから、線の色や種類・太さの変更が可能である。したがって、Test\Map\フォルダーに作ったLine.Smpを元に、以下のようにしてOrgLine.Linを作成してほしい。OrgLine.Linの曲線・直線の設定データは、順に、線番号, データ数, 線の色, 線の太さ、線の種類, オフセット値(x0, y0)である。3番目の線の色はとりあえず黒、つまり0とし、その後に「線の太さ」のデータを追加する。細い方から0、1、2、3なので、これも0としておく。sample\フォルダーのLine.Smpを例にとって作成すると、以下のようになる。

 Line.Smp        新OrgLine.Lin
 15            15
 1,249,0,0,0,0      1,249,0,0,0,0,0
 1,115          1,115
 1,112          1,112
 中略           中略
 2,48,2,3,0,0       2,48,0,0,3,0,0
 以下略          以下略

 図5.6  Line.Smpから新OrgLine.Linを作る

イ.[地図名]Main.Loc
 地点データファイルLoc.Smpを、たとえば、TestMain.Locというファイル名で保存する。

ウ.OrgKanji.Knj 
 漢字データファイルKanji.Smpに、以下のように、奇数行目に赤字部分(”,10,"MS Pゴシック",0,#FALSE#,#FALSE#”、ただし最終行は、”10,"MS Pゴシック",#FALSE#,#FALSE#,0”)を追加して、このファイル名で保存する。最終行のみ、項目の順序が異なるので、注意されたい。(この部分、2007.11.20に訂正追加)  
  5
  205,5
  "凡例",10,"MS Pゴシック",0,#FALSE#,#FALSE#
  5,10
  "LINGUISTIC ATLAS OF",10,"MS Pゴシック",0,#FALSE#,#FALSE#
  5,20
  "SOUTHWESTERN IZUMO",10,"MS Pゴシック",0,#FALSE#,#FALSE#
  140,10
  "C. Fukushima",10,"MS Pゴシック",0,#FALSE#,#FALSE#
  140,20
  " 1997",10,"MS Pゴシック",0,#FALSE#,#FALSE#
  10,170,"3km",3,20
  10,"MS Pゴシック",#FALSE#,#FALSE#,0

  図5.7 Kanji.Smpから新OrgKanji.Knjを作る

エ.[地図名]AKanji@main.Knj
 sample\Map\フォルダーに入っているsampleAKanji@main.Knjを、TestAKanji@main.Knjというファイル名で保存する。必要があればあとで変更できる。
  1
  0,0
  "",10,"MS Pゴシック",16711680,#FALSE#,#FALSE#
  -1
 
オ.OrgBmap.Blm
 sample\Map\フォルダーにあるOrgBmap.Blmをエディターで読み込み、sampleをTestに入れ替えたものを作って、このファイル名で保存する。
"main","c:\Seal70J\Test\Map\OrgLine.Lin","c:\Seal70J\Test\Map\OrgKanji.Knj","c:\Seal70J\ Test \Map\ Test AKanji@main.Knj","c:\Seal70J\ Test \Map\OrgHfont.Hfn"

カ.OrgHfont.Hfn
 sample\Map\フォルダーにあるOrgHfont.HfnをTest\Map\フォルダーにコピーしておく。
  16777215,"MS Pゴシック",10,0,#FALSE#,#FALSE#
  #FALSE#,0
  0,16777215,10

 このように、@ファイルに加えて、Aファイルを作ることで、新規地図データを扱うことが可能になる。SEALをたちあげ、メインフォームの[地図名]をクリックして(あるいはメインフォームの[地図の設定]−白地図の作製フォームの[地図名]とクリックして)、表示のフォルダーでよいかというのに[いいえ]と答え、メッセージにしたがって、
  Test
  main
と入力していくと、Testの白地図が表示されるはずである。白地図の作製フォームで、[曲線設定]をクリックすると、曲線の編集(線の色や種類、太さの変更)ができる[文字設定]をクリックすると、文字のフォントやサイズ、色、種類の変更ができる。これらの設定を行うと、上で作った作業ファイルが自動的に修正される。この段階では、もう作業ファイルを意識して作業する必要はない。