言語地理学のへや 言語地図作製システムSEAL 公開と情報交換の場

県立新潟女子短期大学 福嶋秩子                    Uploaded on May 11, 2007

 

SEALで描いた言語地図3 

異なる言語地図の比較: 「短大生の方言」と『方言文法全国地図』

 

「短大生の方言」の地図: 1994年から2002年にかけて集めた短大生の方言アンケート調査の結果。地図の説明はSEALで描いた言語地図2を参照

質問文:「今日は晴れだから海へ行こう」をどのように言いますか。 例:広島なら「晴れじゃけー海へ行こーやー」

京阪語のサカイに由来するスケと、それから変化したッケが周圏分布を見せる。ッケは中越の長岡あたりを中心に広がったのではないかと思われる。また同じく関西系と思われるシの分布が佐渡および越後の海岸部を中心に見られる。糸魚川・青海のソイも特徴的である。

 「短大生の方言」の言語地図:「だから」の後半部の総合地図(グループ地図) カラー地図


SEALで地図化した「方言文法全国地図」の新潟県の分布:「短大生の方言」と共通の白地図上に、。『方言文法全国地図』「(雨が降っている)から」の調査データをプロットして言語地図を作成した。データはホームページ上で公開されているものを使い、新潟県分29地点のデータを抜き出して言語データを作成した。「短大生の方言」の地点は市町村役場であり、二つの地図のデータの地点は必ずしも一致しない。『方言文法全国地図』は1979-1982年に、当時の60-70代の高齢者をインフォーマントとして収集したデータを使っている。「短大生の方言」とは、生年でほぼ70年以上の差がある。

サカイに由来するスケがほぼ全県的に分布するほか、シケ、スケ、スカイ、サゲ、サケなど多様な語形があったこと、北端の粟島・山北にッセ、西端の糸魚川・能生にソイ・ソエがあること、〜ン(ダン)ガなど別の語形も使われていたことがわかる。


次の図は、「短大生の方言」「(晴れだ)から」と『方言文法全国地図』第1集33図「(雨が降っている)から」を重ね合わせた地図である。前者は灰色、後者はカラーで示されている。『方言文法全国地図』の世代にあった多様性が若い世代では薄れ、サカイ由来の語がスケに集約され、スケから変化したッケが広まったことがより明らかとなる。

この地図の重ね合わせの方法については、次の論文を参照してほしい。福嶋秩子「パソコンを用いた言語地図重ね合わせの新手法」(PDFのダウンロード 225KB) 県立新潟女子短期大学紀要42
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