ブックタイトル平成28年度公開講座記録集

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平成28年度公開講座記録集

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平成28年度公開講座記録集

第2回 里親と子どもがつくる家族のかたち日本で里親をすること?光をあてる?メロディ・クック2016年12月3 日、地域連携センターは、田代健一氏(新潟県中央福祉相談センター所長)、伊藤信広氏(新潟県里親会中央支部支部長)、五十嵐ふさい氏(ファミリーホームいからし)の3 名の方をお招きし、「里親と子どもがつくる家族のかたち」をテーマに公開講座を開催しました。3 名の方は、なぜ、いかにして里親制度が日本で普及したかについて、ご自身の経験もまじえて非常に有益な発表をしてくださいました。参加者は、119名の学生と14名の地域の方々でした。地域連携センターのメンバーが「里親」をテーマに公開講座を開催することに決めたとき、私はとてもうれしく思いました。一人の養母、一人の里親として、そのどちらについても一般的な情報が知られていないようにずっと思っていたからです。このような知識の不足は、里親や里子についての誤解につながります。里親に関する情報を提供できれば、もっと多くの日本人が、いかにして子どもたちが里親のもとで暮らすようになるのか、どうしたら彼らを援助できるのかを理解する助けになり、少なくともその子どもたちを理解することができます。私の故郷のカナダでは、里親になることや養子縁組を行うことは普通のことです。私の友人の何人かは里親ですし、外国の子どもを養子にした友人はたくさんいます。私の故郷では、両親と異なる外見をした子どもを見かけるのはめずらしいことではありません。私の高校時代の友人には、夫婦ともに白人で、中国の女の子を養子にした人が何人かいます。幸いにも、子どもたちの通う学校では、両親と外見が似ていないのは、その子どもたちだけではありません。海外の子どもを養子にした親たちの多くは、カナダという環境の中で子どもを育てながらも、子どもが出身国の言語を話すことができるように語学学校に通わせることによって、人としての良心から、子どもたちが民族的アイデンティティを保持できる手助けをしています。養子になった子どもが生みの親に育てられている子どもと同じように育てられているということは強みであり、いつかこのような状況が日本でも普通のことになってほしいと私は願っています。田代健一氏は、子どもたちが施設や里親のもとに行く理由についてたくさん語ってくれました。残念ながら日本では児童虐待や育児放棄が増加しています。男女間の経済格差が原因となり、シングルマザーが、家族を養うためにいくつかの低賃金労働を掛け持ちし、家庭での育児放棄に至ることも少なくありません。あるいは、経済的に子どもたちの世話がまったくできなくて子どもを施設にあずける場合もあります。このような家族は、血縁による家族関係を壊さず子どもを戸籍に残したいと思っていても、自分では子どもを育てられません。このような場合に、里親家族は、子どもたちを家族という環境のなかで保護するための答えになるのではないでしょうか。伊藤信広氏と五十嵐ふさい氏は、里子を育てることに伴う多くの困難ついて語ってくれました。例えば、里子になるという状況に置かれたとき、子どもたちの反応は一様ではありません。すくすくと育ち、短大や大学に進む子どももいれば、里親家族に反抗し、思ったようには人生がうまくいかない子どももいます。その上、施設で暮らす子どもたちは、他の子どもたちに比べADHD(注意欠陥多動障害)や発達障害、学習障害である確率が高いのも事実です。しかし、他の里親やソーシャルワーカー、地域の人々による知識や支援があれば、これらの問題に対して適切に対応することができると考えられます。参加者の反応は非常に肯定的で、深く考えらえたものでした。また、学生たちのパネリストへの質問も良い質問で、私たち主催者は大変うれしく思いました。彼ら彼女らの多くが将来保育者となることを目指していたからです。今回の公開講座が、参加者に里親についての知識や現状を知ってもらう契機となり、今後の日本社会における里親に対する理解が徐々にではあっても広められていくことを願っています。(翻訳:福本圭介)15 University of NIIGATA PREFECTURE