ブックタイトル平成27年度公開講座記録集

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平成27年度公開講座記録集

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平成27年度公開講座記録集

第2回公開講座 伝統の技術が拓く世界への道売り上げは全て直営店にしようと思っています。したがって百貨店などの小売業では販売しない体制を構築します。燕本店と青山店に加え、現在銀座店の出店準備を行っており、再来年の春に開店します。大切なことは自分たちが作った銅器は、自分たちで売っていこうということです。私が入社したのは1995年で、その時の流通経路は地元の問屋を通すものでした。燕三条には問屋が何百軒もあります。そこから百貨店問屋に渡り、さらに百貨店へと卸されますので、価格がどんどん上がります。何よりもお客さまの直接の声が聞こえないというのは、ものづくりをする立場としては致命的だと思ったのです。私が入社した頃はバブルが崩壊して、売り上げは3分の1 に落ちた頃です。1995年2 月に従業員の半数を解雇し、私は翌月3 月に大学を卒業してすぐに入社しました。商社で修業して玉川堂へ入る気持ちもありましたが、親父(六代目社長)は、「もういつ潰れるか分からないような会社だから、すぐ営業をやってほしい」と言われ、まずは流通改革から取り組みました。問屋を通すことによって価格が上がることは止むを得ないとしても、お客さまの声が聞こえないという欠点だけは解消しようと思い、まずは地元問屋を外し、直接百貨店と取引できるよう、日本橋の三越さん、新宿の伊勢丹さん、銀座の三越さんなどへ、アポなしで銅器を持って売り込みに行きました。その熱意が認められ、翌年1996年5 月に、まず新宿の伊勢丹さんで実演販売会の機会をいただきました。職人を連れて行き、職人がお客さまとお話しながら今どういう銅器が求められているかを直に聞き、それを工場へフィードバックさせて商品開発を行いました。実はこの催事で、銅器のぐい呑やビールカップがないという声を聞いて開発したのが酒器です。玉川堂はそのまま地元問屋に商品を渡して、それで終わりであれば、酒器は存在していませんでした。お客さまから耳の痛い話もたくさん聞きましたが、そのような話を職人に伝えると工場の雰囲気も変わりますよね。大事なのは、お客様と職人を直に繋いで、自分たちが作ったものは自分たちで売っていくことです。これからの玉川堂の方向性として、今後は百貨店に頼るのでなく、「私たちが作った銅器を、私たちのお店で、私たちが丁寧に販売する」というコンセプトのもと、直営店で商売していこうと形にしたのが去年開店した青山店であり、再来年に開店する東京2 号店の銀座店です。玉川堂5年計画として、国内は直営店のみで販売し、玉川堂10年計画では、海外の小売店との商売もやめ、計画中のニューヨークやパリで直営店を開店し、海外でも直営店ですべて販売していきます。次に15年計画です。今、私は45歳です。15年後は60歳になっています。60歳の時には国内外の直営店を廃止し、直営店は燕本店に集約させ、燕本店での売上を100%に持っていきます。一部店舗は、メンテナンス機能として残します。燕本店周辺には、玉川堂ミュージアムや銅器を使用した玉川堂レストランなど、玉川堂の世界観を存分に表現したいと思っています。燕三条から世界へ出るのではなく、世界の方々から燕三条へお越しいただくという仕組みづくりが、これからの燕三条にとって、とても重要なことになると認識しています。ヨーロッパの田舎にあるミシュラン三つ星のレストランには、連日、たくさんの外国人で賑わっています。工場を観光資源とし、この現象を燕三条で作っていきたいのです。現在、燕三条の工場を開放するイベント「燕三条 工場の祭典」が毎年10月に行われており、玉川堂としても重要な事業として位置付けています。今年が3 回目で、来年4 回目を迎えます。毎年、倍々ゲームのように参加人数が増えていきます。アンケートを見ると、20代、30代の方が半分ぐらい占めており、3 ~ 4 割の方が県外から来ています。燕三条のものづくりが、若い世代に対して非常に訴求力がある。そういう若い世代を取り込んで燕三条の活力とし、職人の成長の可能性につながれば、人材確保としても非常に有効なイベントだと思っています。●国際産業観光都市づくり私は、燕三条を国際産業観光都市にすべく尽力しています。産業観光というのは、燕三条の工場を観光資源とし、世界中の方々から工場見学を目的として燕三条にお越しいただくということです。ものづくりの現場を開放することで、お客様の製品に対する信頼と愛着が生まれ、作り手のおもてなしの心が製品にも反映されます。職人はお客さまと触れ合うことにより、お客様へのおもてなしの心が生まれ、それが製品にも表れてくると思っています。閉ざされた製作現場で1 日8 時間ずっと働いているよりは、最初は恥ずかしいと思いますけれど、お客さまと触れ合うことによって張り合いが出ますし、新たな気づきも生まれてきます。職人がお客さまと会話17 University of NIIGATA PREFECTURE