ブックタイトル平成27年度公開講座記録集

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平成27年度公開講座記録集

第2回公開講座 伝統の技術が拓く世界への道ので、金と同じです。よって銅は「金」に「同」じと書きます。一方、鉄は錆びると中に食い込んでいき、最後は砂になりますよね。鉄は「金」を「失」うと書きます。よく鉄工所では、縁起が悪いからあえて難しい漢字(鐵)を使っています。そういう意味で私たちは、銅という最高の素材を使い、それに命を与えているという気持ちで作り続けています。次に鎚起銅器の特色です。湯沸は玉川堂製品の中でもよく売れている商品ですが、ステンレスの25倍、鉄の5 倍の熱伝導があり、さらに殺菌効果による汲み置きの効果があるので水やお湯がまろやかになります。玉川堂の急須も、日本茶だけでなく紅茶やハーブティーを入れると、茶葉はよく蒸れることで葉がよく開いて香りが良くなり、さらにまろやかさも加わって本当においしくいただけます。酒器も美味しくいただけます。新潟は日本酒が有名ですが、銅のぐい呑に日本酒を入れると、銅イオンによってまろやかになります。これは、ガラスと銅で飲み比べるとよく分かります。ガラスはピリッと感じますが、銅は味わいが丸くなります。熱伝導によって器自体も瞬時に冷たくなり、口当たりも抜群です。また、銅鍋は銅イオンによって野菜の色が鮮やかになります。新潟は枝豆が有名ですよね。枝豆をステンレス鍋と銅の鍋で同じ条件で茹でてみると、銅鍋の方が色が鮮やかになります。また、ステンレスの寸胴鍋だと熱が底に集中しますが、銅はその熱伝導の良さから全体的に熱が均等に伝わりますので煮込みにも最適です。このように銅は、生活道具に取り入れるとお酒や料理がおいしくなる効果があるのです。●男女の感性とものづくりのコラボレーション先ほど1816年創業、来年が200周年という話をしましたが、玉川堂の本店の建物は明治末期に建てられた建物です。明治41年に燕で560軒ぐらいの大火があったためその建物を現在地に移築し、7 年前、建物の保管に努めようと、文化庁の登録有形文化財に登録をしました。前庭に石畳があり、昔はこの石畳を通って正面玄関から上座に進めました。さらに奥へ進むと、燕本店の工場があり、こちらで銅器の製作を行っています。今、職人が18名おります。そのうちの4 名が女性です。最近の入社希望の傾向として、女性が多いですね。多くは美術系の大学生で、毎年20~30人の入社希望者があり、その中から2 人を採用します。今年は結構男性の希望者が多かったですけれど、9 割方が女性で女子学生2 人を同時に採用した年もあります。最近の玉川堂の商品取組についてですが、ルイ・ヴィトングループとのコラボレーションで作ったシャンパンボトルクーラーがあります。これは、シャンパンが女性の着物を着ているイメージのデザインで250個作り、パリのロブション・エトワールといった超高級レストラン、日本では京都の吉兆などに納められています。また、燕の商工会議所の企画で燕ブランドの「enn」というシリーズで企画して作ったプレートも海外の高級レストランで使われています。銅というのは塩気・酸気に弱く、それらが付着した状態で放置しておくと、緑青、錆びが出ます。この燕三条地域というのは金属であれば何でもできる土地柄で、コーティング専門の会社もあり、そこで銅が錆びずに鎚起銅器の着色が耐えられるようなコーティングを開発しました。長時間塩気・酸気に触れれば、そこから染み込むことは当然あり得るので完全ではありませんけれども、コーティングをすることで料理を出す分には問題のないレベルにまで仕上がりました。燕三条イタリアンレストラン「Bit」(新潟市中央区新島町通)では、世界で一番多くの玉川堂製品をご使用いただいており、「玉川堂コース」は、このサービングプレートで提供されます。玉川堂には色々なオーダーが届きますが、全てを受けるわけではありません。ただ、鎚起の技術で様々な商品を製作できるという意味でお受けした製品としては、鎚起銅器のテディベアがあります。一枚の銅板から手足などすべて継ぎ目なしで製作しています。鏨(たがね)という金属と鉄15 University of NIIGATA PREFECTURE