ブックタイトル平成27年度公開講座記録集

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平成27年度公開講座記録集

平成27年度新潟県立大学公開講座「分かち合おう!新潟の魅力」株式会社玉川堂 七代目社長 玉川 基行 氏●燕三条と鎚起銅器弊社は1816年が創業、来年で200周年になります。初代が17歳の時に開業しまして、以来200年の間、鎚起銅器製作一筋に歩んできました。鎚起銅器は一枚の銅板を金鎚で叩いて様々な形を作ります。例えば口打出という湯沸は、胴体から注ぎ口を打ち出すため、胴体と口に継ぎ目がありません。鎚起銅器の製作には、金鎚や鳥口(銅器をひっかけて叩く鉄の棒。形状によって300種ほどを使い分ける)など、様々な道具を使いますが、それらは既製品はなく、全て玉川堂の職人が作った道具です。三条の鉄工所から鉄の棒を仕入れ、玉川堂の職人が加工しています。一般的に金属というと叩いて伸ばすイメージがありますが、鎚起銅器は叩きながら縮めていきます。「鉄は熱いうちに打て」という言葉通り、鉄は真っ赤なうちに叩いて成形しますが、銅は冷めても柔らかさが持続するため、炉で熱してから水に入れて急冷し、柔らかくしてから叩いて成形します。さらに天然の液に浸し、銅を酸化させて着色します。今でも世界中で銅器が製作されていますが、そのほとんどが銅の地のままの日常雑器であり、着色などの工芸品的要素を施したものは他にありません。玉川堂の銅器の特色は、叩いて器状に縮め、さらに酸化させて色を着けるという点にあり、ここが他の金属加工技術と大きく違う点です。玉川堂には明治時代から使っている銅器が多数ありますが、乾拭きを繰り返すことによって時を経た色の深まりと艶をたたえています。この経年による色艶の円熟味も玉川堂の鎚起銅器の大きな特長です。●鎚起銅器の命玉川堂で昔から受け継がれている言葉に、命という言葉があります。人が1 枚の銅板を叩く、この「人」と「一」と「叩」く、この言葉を組み合わせると、命という言葉が生まれます。よくできた言葉ですね。(この言葉を作った)中国人ってすごいなと思いますけれど、これを我々は肝に銘じて銅器を作っています。私たちは一枚の銅板を叩いて命を作りますので、工場で完成した銅器はまだ赤ちゃんだと思っており、この赤ちゃんをお客さまへお渡しし、その成長を託すものと考えています。一方で工業製品は、仕上がった新品の状態がある意味成熟した大人だと思うのです。完成したその時が製品としてのピークであり、その後は徐々に劣化していく。逆に鎚起銅器は、使って乾拭きを繰り返す事で艶が増して色味が深まり、ますます円熟味を増していく、育ち行く道具なのです。●鎚起銅器の歴史と特徴玉川堂で愛用している銅器に120年前のものがあります。さらに言えば、銅器というのは、約5000年前に生まれ、古代エジプトからシルクロードを渡り日本へ伝わってきましたが、中国では3000年~4000年前の銅器がまだ現存しています。玉川堂青山店の近くにある根津美術館には、3000年前の銅器があります。ということは少なくとも3000年?4000年は使えるということですね。銅の錆びと言えば緑青ですが、緑青というのは害はありません。昭和50年頃まで害だと言われていたのは、日本だけの迷信です。銅の錆びは、盛り上がって中に食い込むことがないUniversity of NIIGATA PREFECTURE 14