ブックタイトル平成27年度公開講座記録集

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平成27年度公開講座記録集

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平成27年度公開講座記録集

第2回公開講座 伝統の技術が拓く世界への道「伝統の技術が拓く世界への道」の背景にあるもの青木知一郎はじめに私は2013年度から公開講座の企画を担当しています。「ふーど工房ゆうこ」の五十嵐様(2013年度)、「岡村葡萄園」の岡村様(2014年度)、そして今年度と、3 年間の各年度で燕三条とつながりのある方々に講師としてご参加いただきました。紙面を借りて、これまでご協力いただいた皆様に御礼申し上げます。この小稿では、私と燕三条との接点から話を始めて、今年度の公開講座のうち「伝統の技術が拓く世界への道」を準備しながら私が考えていたことをお話いたします。燕三条と私県外出身の私にとって、新潟に赴任するまでの燕三条のイメージは、恥ずかしながら洋食器の町という程度で、それまで訪問したこともありませんでした。それがここ数年は訪問の頻度が増しています。訪問が頻繁になったきっかけは、2010年に行われた企業見学会でした。県内大学生が地場産業を担う企業に訪問してお話を伺う企画で、三条市の方々が中心となって立ち上げたもの、と記憶しています。本学1 期生が2 年生になり、就職が頭の片隅にちらつきだす頃でしたので、これに加えていただきました。この企業見学会はその後、就職を控えた3 年生向けの夏休みにおける本学独自の企画として、関係する方々のご協力をいただきながら、毎年続いております。私も、参加学生の事前準備として訪問先企業の概要や見学に際しての注意事項などを話すことで引き続き関わっており、時間の許す限り見学にも同行するようにしています。2015年度からは、関係する1 年生向け授業で燕三条地場産業振興センターの方を特別講師としてお招きしており、その授業の延長線として地場産業についての知識を更に深めるために「磨き屋一番館」などを学生と訪問しました(2016年2 月実施)。学内全体としてみればもっと幅広いお付き合いがあると思いますが、私が関係する範囲ではこんなお付き合いが続いています。伺った企業の多くで、ものづくりの現場を見学する機会をいただきました。ものづくりの現場である工場は、そこで働く方々にとっては職場です。自分の職場を外部の人間に公開することは、簡単なことではありません。燕三条が得意とする金属加工の現場では、加工に使う機械や薬品があるので、見学者の安全確保を考えると、なおさらと思います。私は長く銀行員として働いてきましたので、それなりの数の企業(工場)見学をこなしてきたつもりです。燕三条で企業見学に伺って感じているのは、企業の規模を問わず、特に構えた雰囲気を感じさせることなく外部の人間がものづくりの現場を見学出来ることです。どうしてなのか、以前から疑問でした。2015年10月に行われた「全国産業観光フォーラムin燕三条」で関係する方々のお話を聞く機会を得て、こうした疑問が氷解しました。フォーラムでは、記念講演のみならず分科会で「工場の祭典」の舞台裏についてのお話も聞かせていただきました。登壇された皆様のお話から「外部の方々に見ていただく」ことを大切にする強い意志を感じ、それが地域で共有されていることがよく分かりました。昨今、インバウンド観光と絡めた文脈で地域の活性化という言葉が良く使われます。その意味を理解することは容易ですが、来訪者数を増やすことで本当に地域が活性化していくためには、受け入れる側もそれなりの覚悟が要ります。登壇された皆様のお話から、地域活性化に向けての覚悟を感じた次第です。新しい出会いさて、今年度公開講座に話を戻すと、玉川堂社長の玉川様及び燕三条地場産業振興センター燕三条ブランド推進室長の山田様に講師をお願いするに際して、私が自分に宿題として課したのは、お二人に新しい出会いや発見を提供できるか、でした。今回の講演の題である「伝統の技術が拓く世界への道」と結び付けて言えば、伝統の技術が世界への道を拓いていくには、新しい出会いが生み出す新しい発想、それと結びついた新しい商品開発が必要ではないか、と思ったからです。新しい出会いによって、燕三条の皆様の試みに僅かでも貢献出来れば、と考えました。そこで、異なった文化の中で育った方々に何らかの形で参加していただく、という点を最初から意識して準備を進め、Niigata SAKE Lovers(以下、NSL)の皆様にパネルでの参加をお願いしました。玉川様のご講演の中で「伝統とは革新の連続」「経営者の発想は移動距離に比例」「海外出張の多い経営者ほど経営戦略が豊か」といった言葉が出てきたことで、新しい出会いにこだわったことは間違いではなかったと安堵した次第です。デュケット様をはじめとしてパネルに加わっていただいたNSLの皆様には、公開講座の前にお休みをとって、玉川堂の工場を見学していただきました。事前準備をしてこの公開講座に参加していただいたことにたいへん感謝しております。NSLのFacebookの記事を拝見すると、工場の見学で新しい出会いを楽しんでいただけたようであり、こちらもホッといたしました。9 University of NIIGATA PREFECTURE