ブックタイトル平成26年度公開講座記録集

ページ
7/64

このページは 平成26年度公開講座記録集 の電子ブックに掲載されている7ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

平成26年度公開講座記録集

ブックを読む

Flash版でブックを開く

このブックはこの環境からは閲覧できません。

概要

平成26年度公開講座記録集

第1回公開講座 佐渡の酒と水─日本酒のテロワール─もちろん土壌にもよりますが、例えばカルスト台地はカルシウムなどの含有量が高いですから、ヨーロッパの水は概して硬いです。お酒では「灘の生一本」と言いますね。灘では「宮水」という硬度が170?180mg/?の水を使っています。硬水だと酵母の生育が非常に良いのでいいお酒ができたと昔は言われていました。しかし今は軟水を使った醸造法が開発されており軟水でも問題ありません。その他にもおいしい水の条件と言われるものがあります。昭和59年に厚生省が出した資料では、一つの指標として蒸発残留物(水分を全部蒸発させて最後残る物質)が30?200mg/?位の水が該当するといっています。蒸留水のようにほとんど何も入ってない水は実はおいしくないんです。また湧水でおいしさの一つの鍵は水温です。水温が低いと美味しく感じる水が結構あります。これもちょっと専門的なので簡単に申し上げますと、さきほど外海府海岸側は杯型だといいました。外海府海岸には特に冬場に北西の風が強く吹きます。そうすると海の水が飛沫になって飛んできて、雨とともに地中に浸透するため、この地域の湧水はNa-Cl型に分類されます。算盤玉形が多い国中平野などの内陸は、海風の影響ではなく土壌中の物質が溶けて湧水に影響しています。だから土壌の種類にもよりますが、カルシウム、マグネシウム分が若干高いやや硬水になります。では小佐渡はどうでしょう。大佐渡の水の形とは随分違います。へこんだユニークな形が見受けられます。また非常に特徴的なのが隆起岩水です。これは硬度1 の超軟水です。これらもやはり個々の土壌や海風の影響を受ける自然条件のなかで水が形成されています。地下水や湧水は、土壌と非常に密接に絡んでいるという意味で、まさにテロワールといえます。●水に纏わる伝承水は科学的に不思議な性質をもつだけでなく、その伝承の中から、水の文化性・神秘性といったことに繋がる不思議なことが見えてきます。佐渡の水を色々調べるうちに、おもしろい伝承が出てきました。たとえば榧の木清水というのがあります。これは両津の外れにある久知八幡宮という神社で出ている湧水です。この神社は、応和元年(961年)、京都の石いわしみず清水八幡宮から分霊して佐渡に持って来て、1400年ぐらいに現在地に移っています。我々の平成25年の聞き取り調査で、榧の木清水が濁る時には東強清水の水も同時に濁るという伝承に出会いました。今年、東強清水地区の三郎右衛門の川5 University of NIIGATA PREFECTURE