ブックタイトル平成26年度公開講座記録集

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平成26年度公開講座記録集

平成26年度新潟県立大学公開講座「新潟における食の風景」佐渡・公開講座青木 知一郎この講座に関わってから日本酒や水について色々とお話を伺う機会があり、抱えていた年来の疑問が氷解しました。どんな疑問が解けたのか、本稿ではそこから話を始めて、大学の役割について改めて感じたことを最後にふれておきたいと思います。この講座の準備を始めるまで、私は酒造会社の方々が話される「地元へのこだわり」という言葉をスッと飲み込めませんでした。日本酒の国内出荷は下げ止まってきたとはいえピーク時の半分以下です。業界としてある程度の生産量を確保するためには、輸出などで海外の需要を取り込むことが必要でしょう。日本酒の輸出を国が後押しするという点では、2012年の「ENJOY JAPANESE KOKUSHU(國酒を楽しもう)」プロジェクト、現在では「クールジャパン戦略推進会議」と、政権が交代してもその姿勢は明確です。輸出に注力という業界としての課題と、地元へのこだわりという酒造会社の方々のお話を、どう結びつけたらいいのだろうか、佐渡という枠内で考えてみよう、というのが、私の中では当講座の大きなポイントでした。今回ご講演をお願いした平島様が社長をなさっている尾畑酒造様のお酒は、エールフランスの機内酒に採用されています。海外志向の強い酒蔵というイメージがある一方で、四宝和醸という言葉から窺えるように、佐渡にこだわっている酒蔵でもあります。そして、日本酒を造る過程で重要な役割を担う水の研究がご専門の髙橋様に加わっていただきました。水は、酒造りの過程で重要というだけでなく、離島という佐渡の環境からいって、佐渡の水という視点が必要、と思ったからです。今回のご講演などでお二人のお話を伺って感じたのは、「テロワール」という言葉の広がりです。私は、テロワールが示すものとして、直訳的に土壌と考えていました。高橋様から土壌成分が水に溶け込むなどして水の性質が決まってくるというご趣旨のお話を伺い、水もテロワールの重要な一部であることがよく分かりました。そうした水を使って造られた日本酒には、その性質が色濃く反映されるのは当然でしょう。さらに、湧水を中心に人間の営みが展開されていた、という高橋様のお話からは、コミュニティーが形成されて一つの地域が出来ていくのに水が果たしてきた役割の大きさが分かります。つまり、水は地域の人々をつないでいる、ということでしょうか。こう整理していくと、その地域に住んでいる人もテロワールの一部、という平島様のお話とつながっていくと思います。今回のご講演のサブタイトルとしたテロワールという言葉を介して、酒造会社の方々がおっしゃる地元へのこだわりの背景が幾らか見えてきたように感じました。海外需要の取り込みと地元へのこだわりについての平島様のお考えは、学校蔵に関連したお話でよく分かりました。佐渡に興味のある方々が、学校蔵で酒造りを体験していただく過程で、佐渡の自然や食べ物を満喫して佐渡のファンになっていただければ、佐渡への来訪人口が増える、という趣旨のお話です。佐渡に興味を持っていただくきっかけとして、国内他地域や海外など島の外に出ていった佐渡産の商品は大きな役割を果たします。つまり、アウトバウンド(佐渡産商品の輸出など外に向かう流れ)が先行して、それがインバウンド(来訪人口の増加など内に向かう流れ)につながれば地域が活性化する、という形で輸出と地元へのこだわりの両者は結びつくことが分かり、疑問は氷解しました。ただ、先行するアウトバウンドをインバウンドにつなげるのは、簡単ではありません。来訪客の流れを太く確実なものにするには、近隣地域からの集客も大事です。海外からの集客に力を入れて成功している観光地もありますが、集客努力をする過程で日本国内からの来客も増えて、賑やかさを取り戻したことがポイントだったという場合が多い、と思います。近隣地域との交流という点では、開学以来地域に密着した活動を続けている本学がお手伝い出来る部分もある、と感じました。University of NIIGATA PREFECTURE 2