ブックタイトル平成26年度公開講座記録集

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平成26年度公開講座記録集

平成26年度新潟県立大学公開講座「新潟における食の風景」と言っても、新潟のお酒の一部であり、特に技術などは新潟で勉強しておりますので同じように語れる部分が多いため、新潟清酒のテロワールから話を始めます。第一に自然環境、主に気象のことですが、新潟県は、酒造りに最適な気象環境だと言われています。米を収穫したあとの秋から酒造りを始めるのですが、いわゆる寒仕込み、冬の間に集中的に造ります。関東に行くと毎日晴れていますが、新潟県の冬は、天気が悪い日が続きます。そうすると、日中と夜の気温差、日較差と言いますが、新潟県では小さくなる。なおかつ安定して気温が低いので、発酵を行う際に有利な条件が揃っています。また、大量の雪は空気を清浄するという意味でも有利だと言われます。醸造に際しての素晴らしい環境が揃っている点が、新潟の清酒におけるテロワールの一つと考えます。第二に、米についてお話します。新潟は、言わずと知れた日本一の米どころですが、それを支えている栽培技術が素晴らしい、と言われています。いいお米がとれる土壌がありますし、さらに環境面では、東京など関東より夏場の日照が長いことが米作りには有利です。そのため酒造りにとてもいいお米が取れるところとなっています。付け加えると、通常の酒に比べると、新潟では米をたくさん磨いて使っております。磨いた米の残った部分、これを平均精米歩合といいますが、新潟ではこれが58.5%、つまり41.5%を削り落として使っております。全国平均と比較すると、8 %ほど余計に米を磨いて酒造りをしております。つまり、贅沢な酒造りをしています。周りの部分を取ることで、新潟のお酒らしいクリアな、すごく綺麗なお酒を造っていることも、テロワールの一つと思います。第三に、水についてです。水に関しては、先ほど髙橋先生からお話を頂戴しておりますので、重複する点はお許しください。新潟県の場合は、山が高くて、そこが豪雪地帯です。日本全体がそうなのですが、雪解け水は、川が短い上に急斜面なので、直ぐ海に出ます。従って、軟水が多い土地と言われています。酒造り自体は軟水の方がもともとは難しかったと言われまして、軟水で発酵がしにくい場合には、塩を入れたそうです。塩を入れることでミネラルが多くなって発酵が盛んになるといった学術的な裏づけはなかったようですが、ミネラルが少ない軟水での仕込みは簡単ではなかったことの一例です。逆にその分、ゆっくりと仕込んで、時間をかけて作るということで、より柔らかなお酒、酒質ができます。また、もともとミネラル分が少ないので、早いうちから飲みやすいお酒になることも新潟のお酒の特徴と言われています。硬水の酒造りと軟水のそれのどちらがいいかは、それぞれの好みもありますし、優劣をつけるものではないのですが、新潟のお酒の特徴、つまりテロワールは、この水に大きく関わっているだろうと思います。第四に、人に関わる部分です。新潟県の清酒業界は、人を育てるシステムを極めてたくさんもっております。特に一番大きなものが、若手技術者の養成を担当する新潟清酒学校というシステムです。県内の多くの酒造メーカーの社員の方々がここで勉強しております。定員20名で3 年間しっかりと学ぶ場所を業界として提供しているのは、新潟県だけのようです。特にこれには、新潟県醸造試験場という県立の機関が強く関わっています。清酒のみを対象にした機関を持っているのは新潟県だけです。そういった技術的な裏づけがあるがゆえに、新潟のお酒は日本で一番、と言われるような評価を頂いていると思っています。●テロワール?佐渡の酒ここから、新潟県の中でも佐渡におけるテロワールについてお話しいたします。佐渡のキーワードは、やはり冒頭でお話ししたように、朱鷺だと思っています。つまり、環境です。朱鷺がいるから、減農薬・減化学肥料栽培をしています。朱鷺がいたからエコアイランド構想が行われていますし、近年は世界農業遺産に佐渡が認定されました。日本では、最初に佐渡と能登が登録されまして、今増えてきて五つです。佐渡の場合は、いわゆる生物多様性、生University of NIIGATA PREFECTURE 10