ブックタイトル平成26年度公開講座記録集

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平成26年度公開講座記録集

平成26年度新潟県立大学公開講座「新潟における食の風景」す。その役割は主に女の人や子どもが担っています。そうすると子どもが教育を受ける時間が取れない、貧困から脱出できないという問題に繋がります。アフリカの一つの問題の背景には、水がこうして関係しています。地球上に水はいっぱいあります。そのほとんどは海水で、淡水は2.5%しかありません。しかも、その淡水のほとんどは氷だったり地中深く沈んでいる水だったりして取れません。つまり、実際に我々が使える水というのは、地球の水全体のわずか0.01%です。さらにその水の約10%しか我々は使っていません。水は流れてしまう、あるいは地下水として活用できなかったりするためです。これは日本のようにダムなどのインフラが整備されていないためです。こうしたインフラ未整備のところが世界の各地にあります。ユニセフが発行しているニュースレターによると、下痢性の病気によって毎日1,400人以上の子どもが死んでいます。世界では、7 億5,000万の人がきれいな水に辿り着けない状況にあります。これに対して日本は、身近なところに湧水があるという非常に幸せな境遇にあります。もう一つ。1995年に世界銀行の副総裁は、20世紀は石油をめぐる争いの世紀であるといっており、また、他方で20世紀は戦争の世紀と言われています。つまり、エネルギーを確保する争いであったと。そして21世紀は水をめぐる争いの世紀になるだろうと言っています。いま日本では水道をひねって何不自由なく水を使っています。そして、気づかないうちに多量の海外の水も使っています。最近マスコミでもよく取り上げられる「Virtual water」という考え方では、ある農産物を作るのに、その土地でどれくらいの水を必要とするかという計算をします。例えば日本は、牛肉を輸入して牛丼を食べます。ところで牛肉1 kgを作るのに20m3 、つまり20トンの水が必要だといわれています。ということは、たとえば牛丼に肉が100g乗っているとしますと、ご飯の上に外国の2 トンの水が乗っていることになります。このように日本は他国の水をたくさん使っているということになります。(豚丼だともっと少なくなります。豚の方がじつはもっと水を節約できます。)いずれにしてもこのバーチャル・ウオーターという考え方はぜひ頭の中に留めていただくといいかなと思います。●私にとっての湧水これまでのいろいろな湧水調査を通じて感じてきたことを最後にお話しします。第一に湧水は地域における非常に貴重な自然資源であると私は思っています。ところが皆さん、その貴重性に気づいていない。調査に行き地域の代表の方に湧水があることをお話すると、以前は使っていたものの水道が整備されてから全く利用せず放置してあるという事例がとても多くありました。かつてその集落の皆さんがその湧水で生活していたのです。生活に密着したものだったのが、水道が通ったことによって現代の生活では忘れ去られています。二つ目に、各地域の水には過去からずっと伝わってきた貴重な考え方、伝承が残っています。聞き取り調査でよく耳にするのは、「あそこのばあちゃんが元気だったらなあ、よく知ってたんだよ」というものです。ということは、そうした伝承が消えかかっているのです。佐渡の500年前の話を語ってくれたのも、実はもう80歳に近いご夫婦でした。そのお子さんは東京に出ているとのことです。我々も一生懸命記録していきたいと思いますが、伝承は消えつつあります。それからさっきの真言密教のように、水には命がある、神さまに比肩するという水に対する畏敬の念や感覚が、現代では忘れ去られています。水はごく当たり前に手に入り、ごく当たり前に飲める時代です。湧水調査を通じてこれは深刻な状況にあると強く感じました。水は自然の恵みだということを理解していただきたい。水は文化性や神秘性を纏い、人々は不便だった生活のなかで水を守ってきました。それがいま全部捨て去られつつあります。水には命があり、浄化する力もあるという?精神性?をもつことは、科学的ではないことも承知のうえで、とても大切なことだと思っています。最後に、縄文時代は湧水の周りに集落が形成されていました。水は原点だったはずです。そういう湧水は今でも出ています。そうした環境が身近にあるということは実に素晴らしいことだということをぜひ認識していただきたいと思います。ありがとうございました。University of NIIGATA PREFECTURE 8