ブックタイトル平成25年度公開講座記録集

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平成25年度公開講座記録集

平成25年度新潟県立大学公開講座「新潟における食の風景」昨年4 月に地域連携センター委員会に加わった私は、『新潟のフードスケープ』と題する公開講座に関わり、忘れがたい経験をすることができた。英国出身の私は若い頃ドイツに住んでいたことがあり、フランス、イタリア、スペインへよく旅をした。ヨーロッパでは「人は食べるために生きる」という言葉があるほど、食は私たちの生活の一部になっている。料理がどんな材料からどのように調理されてテーブルに並べられるのか。食材への情熱を通じて私たちの食文化や個性をも引き出す食べ方までも提示し、私たちを魅了する料理のことを、公開講座の準備をしながら私は考えることになった。第1 回の公開講座は、村上でドイツパンを作っている「マリラ」のご主人・内山秋善さんの話だった。講演の準備のため、本学の小谷先生と私は、内山さんにインタビューをしたが、内山さんのパン作りにかける情熱に心を動かされた。今では全国表彰を受けるほどのドイツパンは、内山さんが奥さんと2人、最高の素材の中から厳選した天然酵母を使用し、自宅横に作った自家製オーブンで作り続け、細部にわたる沢山の注意点を適切に管理することで完成された。内山さんのパンづくりにかける情熱とビジネスにかける想いは、10月12日の第1 回公開講座に来場した人々の心に強く残ったことと思う。9 月には、地域連携センター長の山中先生とともに、新潟駅南のレクスタでウェブ放送に出演して公開講座のPRをした。外国人として私は新潟の「フードスケープ」について語るとともに、司会の阿部さんの助けを受けながら、内山さんの情熱を伝えるよう努めた。また、話題は国内各地の食文化の違いにも及び、この会話を通して私は、日本料理は伝統的に多種多様で、外国料理をも取り入れながら、各地の人々の好みに合わせて完成されていることに気づかされた。このような広く受け入れる姿勢は、興味深いことに、日本食の伝統維持だけでなく、私がヨーロッパ人によって形成されたと信じているいくつかの外国料理の伝統維持にも活かされている。ヨーロッパの「食」を日本で生産する同様の試みは、12 月8 日の第3 回公開講座で登場した「フェルミエワイナリー」の本多孝さんも取り組んでいる。本多さんは試飲用のワインを持参し、ぶどうを育てるにあたっての苦労の経験などについて話してくれた。本多さんも内山さんと同様、製造工程の各段階で細部に注意が必要だということを語っていた。公開講座の後、自宅で私は、ヨーロッパを旅した経験をもつ妻とともに、内山さんのパンと本多さんのワインを満喫した。本物のパンとワインだった。このような完成度の高い味に仕上げるために、内山さんも本多さんも試行錯誤に長い期間を要したのだ。ヨーロッパでは、おいしいものはゆっくりと食べたり飲んだりする。そしてそれを楽しみながら、味や組み合わせについて熱狂的に語り合う。それは、生産してくれた人たちへの感謝の表現でもあるのだ。マリラのドイツパンとフェルミエのワインは、私にヨーロッパの食文化を思い出させてくれた。日本の食文化の多様性が、それに従事する人々の創意工夫によって成り立っていることを知ったことが、今年の公開講座の成果であると思う。フードスケープ(食の風景)ジョン・アダムソン(日本語訳 阿部一郎・沼田 渉)University of NIIGATA PREFECTURE 2