ブックタイトル平成25年度公開講座記録集

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平成25年度公開講座記録集

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平成25年度公開講座記録集

第3回公開講座 フェルミエ ?Fermier?り手の中でドメインなにがしという名前が書いてあります。それから年号が入っています。ビールに年号は入ってないですよね。それから畑の名前が入っています。新潟だと田んぼが一番分かりやすいと思うんですけど、大体、田んぼが区分けされていますよね。そうするとその田んぼ1 枚ずつ、全部名前がついているんです。なおかつ、先ほどドメインの名前が入っていると言いましたけども、同じ田んぼ、同じ畑であっても、その畑を何人かの生産者で共有している場合がありまして、ここからこの列まではAさん、その隣からBさんということになると、同じ畑の名前でも、その造り手の名前が違うんです。そういうことが書いてあるんです。つまりどういうことかと言うと、ワインは違うってことなんです。わざとというか、土地や自然の違いをそのまま表現してできたのがワインだということなんです。ですから、ワインというのはこういう味にしたいって造り込むものではなくて、本来はその土地の、あるいはその自然の、あるいは造り手の個性が反映されているので、畑ごとに、年ごとに、造り手ごとに、全部違うものができるということで、それを楽しむのがワインだということなんです。そういうことに気がづいて飲んでいくと、もう限りなくいろいろなワインがあって、その土地土地によって全部違いますので、そういう意味で楽しんでいって、そうすると、今度は自分でも造ってみたいなと思うようになりました。自分が造ってみたいと思っても、東京じゃできませんから、どこで造るかなと思った時に、真っ先に思うのは自分がずっと生まれ育った新潟の土地で、新潟の自然に根ざしたワインを造りたいと思うようになったわけです。●ワインの価値と普遍性本来ワインというのは、全部自然状況が違って、造り手が違うわけですから、コンテストって向かないんです。違いを認識するものではありますけど、全然違う自然状況でできたものを比べて順位をつけることはできないです。だからよく百貨店とかで出されているワインで、金賞ワインとかって言うんですけど、あれはすごくおかしな話で、一体何が基準で金賞なんですかと。あそこで売り場の人の話を聞いていると、お客さん、これ金賞ワインですからおいしいですよって言うんですよね。全然訳分かりません。日本人はそういうことをしますけど、本来はそうではなくて、そのワインにはちゃんとラベルにどの畑で誰が造って、何年のものかって書いてありますから、それで十分なんです。たとえば、ある方が自分の好みでもって、独断と偏見でこのワインが何点とかいうのはいいですよね。ですけどワインコンテストのように、大勢の方が審査をして、皆さん、それぞれ好みも違うだろうし、基準も違うだろうし、ましてやワインは造っている場所が違いますから比べられないのに、点数をつけたり賞をつけたりするのはナンセンスなんで、うちは出しません。そういうことを考えると、いいワインというのは何かと。私が思うに、その価値があるワインというのは、きちんとその土地の表情を表しているワインがいいワインなんじゃないかと考えます。ですので、必ずしも大規模なワイナリーがいいワインを造るとは限らないということです。規模は小さくても、造る量が少なくても、その土地のワインというのはできるんじゃないかというように思いまして、これは個人でやっていくとおもしろいなというふうに考えました。それから、ワインというのはものすごく特殊なもので、恐らく人間が衣服をまとう生活をするくらいからあったんじゃないかなと思います。つまり最初はブドウを放っておいたら発酵して、水の代わりに長期に保存ができたということから始まったんじゃないかなと思うんですけど、その後、そういうブドウを発酵させて、その液体を瓶の中に入れて取っておくという、そのワインの形というのは、もう何千年と、世界中、大きな災害とか戦争があっても、ずっと変わらずに、今日まで来ているものなんです。ということは、もし個人でワインの事業を始めて、ワインを造るだけの最低限必要な設備をすれば、きっとその設備というのが壊れない限り、ずっと使えるんだなというふうに思ったんです。当時、私が転職した時、脱サラした時というのは、いわゆるネットバブルのころで、結構、転職や脱サラをして、ネット事業ビジネスをやる人も多かったんですけど、そういうものはあっと言う間に技術が陳腐化す23 University of NIIGATA PREFECTURE