平成24年度新潟県立大学 公開講座

平成24年度新潟県立大学 公開講座 page 68/80

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平成24年度新潟県立大学公開講座「阿賀野川流域から世界へ」◆開発経済学からのコメント李:私は開発経済学を専門にしているんですけれども、実は4 、5 年前に、郵便貯金の資金支援をいただいて、中国の乾燥地域で....

平成24年度新潟県立大学公開講座「阿賀野川流域から世界へ」◆開発経済学からのコメント李:私は開発経済学を専門にしているんですけれども、実は4 、5 年前に、郵便貯金の資金支援をいただいて、中国の乾燥地域でNPO活動として農地開発問題と地下水の水位低下問題について取り組んでまいりました。そのプロジェクトで、環境問題の深刻さを非常に認識するようになりまして、最近では乾燥地域の水資源問題、特に水管理政策についても研究をしています。開発経済学というのは、経済学の中で、とりわけ途上国の経済を研究する学問です。今日は、その視点から話をさせていただきます。朴先生のお話の中では、原田先生の言葉も出ておりまして、四日市学が、負の遺産を世界に発信する重要な学となるという話、さらに、教育を通して世界発信すると伺いました。私は、その話の延長線として、何を発信するのかという話をさせていただきたい。日本で環境問題という言葉を使ったら、恐らく、地球温暖化とか気候変動とか生物多様性の減少とか、そういう非常にグローバルな話が出てきますね。確かにそういうような問題も大切で多国間の国際協力や、あるいは政府の対話を通して解決しなければならない。しかし、私のふるさともそうなんですけれども、途上国に行ってみると、環境問題といったら、家の近くの川にみんなごみを捨ててます。悪臭が来て困っています。上流にある、例えば化学肥料を作る工場、あるいは製紙工場がきちんと処理していない汚染した水を垂れ流していて、生活が困っています。その水を使って農業をやっていたら、畑の作物が枯れてしまった、そういう話をよく耳にします。つまり、環境問題というのは、多分、地域によって、経済の発展の段階によっては、考え方も違っています。途上国、特に中国あるいはASEAN諸国とか、経済が早く成長している新興国にとっては、環境問題は、実は産業公害問題というような認識は一般的です。では私たちの暮らすアジアでは環境ガバナンスはどうなっているのか。環境関連の政府機関や法律がいつ策定されたのかという指標を使って見てみましたら、日本は大体、1960年代末期とか、1970年代の初頭には環境ガバナンスが認識され、確立されているようには見えます。けれどもほかのアジアの国々を見てみると、もう少し遅れています。もちろん完全に経済発展の段階的に順番的になっていないんですけれども、大体、高所得国になると環境ガバナンスを意識するようになっています。比較的に所得の低い国だとやっぱり少し遅れます。現状では、日本はアジア諸国の中で最も早く環境ガバナンスに取り組んできた国と思います。じゃあ、途上国、例えば、私の出身国の中国で考えれば、産業公害問題、非常に厳しい状況なんです。経済学で、この産業公害問題の対策を論じるときに、一般的には二つのアプローチがあると考えています。一つの方法は直接規制といって、例えば汚染している企業に罰金を課したり、行政処罰をしたりとか、そういうような、まあ、法律的に定められた基準を施行するというアプローチなんです。もう一つのやり方は、市場経済のメカニズムを活用するっていう手法。つまり、汚染する工場には税金を課したり、環境に優しい生産工程を導入している企業に減税したりとか、そういう経済インセンティブを出して、企業をより環境に優しい生産過程に誘導するっていうようなアプローチなんです。環境経済学とか経済の教科書にはこういう話は載っているんですけれども、途上国の現実を見てみると、うまくいかないんです。なぜかというと、政府は既にいろんな政策目標を持っていますよね。環境保全も政策目標の一つであって、貧困削減も経済成長も政策目標です。途上国だと、政府は結局、所得向上とか、経済成長を優先してしまいます。それを優先してしまった結果、環境問題が発生してそれに取り組むようになります。日本は、どういう経験を持っていて発信できるかというと、朴先生の話の中でも出ていました日本のUniversity of NIIGATA PREFECTURE 66