平成24年度新潟県立大学 公開講座

平成24年度新潟県立大学 公開講座 page 48/80

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平成24年度新潟県立大学公開講座「阿賀野川流域から世界へ」あって、なんとか魚が上ってくるんですけども、只見川筋のダムには魚道はありません。只見川筋のダムは、戦後、有名な白洲次郎という人、テレビドラマにも....

平成24年度新潟県立大学公開講座「阿賀野川流域から世界へ」あって、なんとか魚が上ってくるんですけども、只見川筋のダムには魚道はありません。只見川筋のダムは、戦後、有名な白洲次郎という人、テレビドラマにもなったり、白洲正子の夫なのですが、その有名な人が東北電力の会長の時代に、このダム群を造ってるんですけども、魚道が1 個もありません。戦前の鹿瀬ダムには魚道があるんですよね。まあ、その辺の問題はあるんですけれども、ともかく川をそんなふうに傷めつけて、発電のためだけの川にしてしまって、川には汚いものを流してもいいっていう、近代精神っていうのはそういうものなんですね。その結果、水俣病を起こしてしまった。今、魚道は上の新郷ダム、それから山郷ダム、それから上野尻ダム、豊実ダムとずっと続いてるんです。上野尻ダムは数年前までは土砂で埋まってて、魚が上れませんでした。だけど平成14 年にその土砂をどけて水が流れるようにしました。それから山郷ダムも、ここに魚道があります。これは土砂で埋まってて、今は機能していません。だからこれを全部、魚道を直せば、会津まで少なくとも鮭が上っていけるようになるんですよね。早めにこの魚道を東北電力が直してくれたらなあと思います。只見川はちょっと無理ですね、今のところはね。ということで、私の川の定義ですけども、この『阿賀に生きる』という映画を作るころまで次の定義で学生に教えてました。「河川とは、地表面に落下した雨や雪などの天水が集まり、海や湖などに注ぐ流れの筋(水路)などと、その流水とを含めた総称である」。味も素っ気も無い取ってつけたような定義ですけども、まあ、水が循環してるってことだけしか定義しておりませんので、この定義から、それじゃ具体的に川にどんな工事をするかっていったようなことになると、コンクリートで固めたりダム造っても、あんまり良心がとがめることがない。そういう定義だというふうに私は思います。それでこの『阿賀に生きる』に関わっていて、やっぱりこの定義じゃ駄目だなっていうことで、次の定義にしました。「地球における物質循環の重要な担い手であるとともに、人間にとって身近な自然で、恵みと災害という矛盾の中に、ゆっくりと時間をかけて人の“からだ”と“こころ”をつくり、地域文化を育んできた存在である」。ただしですね、5 年前の私の最終講義のときは「“からだ”と“こころ”をつくり」っていうのは入れてませんでした。最終講義だからね、踏ん張って自慢話大会です。自分では川の定義はこうだよって、しゃべったんです。そのとき「“からだ”と“こころ”をつくり」は入れてないんですよ。「“からだ”と“こころ”をつくり」っていうのは、『阿賀に生きる』でずっと学んできたことだったんですがね。さっき話したように、加藤のおじいさんは28臼ついても平然としてる。それでいて新潟水俣病にかかってるんですよね。末端神経がいかれてるんですよね。そういう人が、いざとなると28臼を、それも重たい杵なんです。それをついて平気なんです。筋肉がそれだけできてるんですね、80歳になっても。それは、自然の中で労働して、自分の肉体が鍛えられていたっていうことだと思うんです。自然の中、あるいは川で遊んだり労働してきた人たちは体が非常に強靱に作られている。ついでに、脳みそもみんな80歳でもボケてなかったんですね。それはやっぱり脳みそも鍛えらえているということです。なおかつ、自然と付き合ってるから心が優しい。ともかく、そういうこと知ってたんですけども、言葉としてきちっと表現できずに、フレーズを入れたのはつい最近だということです。この定義にすると、やっぱりダムっていうのは川にとっては、基本的に敵対物なんですよね。そういう認識でも、東京があれだけ繁栄するためには、あるいは日本が明治以降ここまで来るためには、水力発電がどうしても必要でした。それから飲み水も必要でした。工業用水も必要でした。都市用水も必要です。それで必要なダムはあります。だけども造り方がですね、川にお願いして造らせてもらうっていうんじゃなくて、川を壊すような形で、ダムができそうだと思う場所に全部ダムを造ってきました。日本には今、ダムのない川ってほとんどありません。だからもうここに至ると、私はダムのない川はレッドリストに載せて保全すべきだというふうに、ちょうど今から20年ぐらい前から、『阿賀に生きる』の映画を作る中で、そういう確信が出てきましたから、もうこれからダムは造っちゃいけないっていうことを言い出したんですね。表面で反対してるんじゃないんです。経済的なことで賛成・反対してるんじゃないんですよ。川にとってはやっぱり敵対物で、もう必要ないと。必要ないという理由も、ご質問があれば答えることにして、取りあえずこれで、阿賀野川に関して共通認識を持っていただけたらなと思っています。一番University of NIIGATA PREFECTURE 46